135回運営委員会
8月1日に「関西STS連絡会」第135回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時半まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:8団体)
NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) ・伊良原淳也(関西STS連絡会)
NPO法人「アクティブ ネットワーク」(茨木市) NPO法人フクシライフ(泉佐野市)
NPO法人「自立生活センターやお」(八尾市) NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市)
NPO法人 いばらき自立生活センター ぽぽんがぽん(茨木市) ・い〜そらネットワーク(大阪市)


【議 案】

■ 資料関係:

@『高齢者らの送迎支援3年で和歌山県の全市町村整備へ』2015.8.1/紀伊民報)
和歌山県は、お年寄りや障害者の通院や買い物、墓参りなどの移動を支援する「福祉有償運送」を、3年間で県内全市町村に広げる目標を立てている事業開始や、拡大する事業者に対し、本年度から車両購入費の補助を始める福祉有償運送の事業者への補助は全国でも少ないという
 福祉有償運送は、移動困難な要介護・支援者、障がい者らを、個別輸送する事業。乗車定員
11人未満の一般車両が使用でき、定められた区域内を運行、戸口から戸口まで送迎する
 過疎化が進み、一人暮らしが多い山間部などでは、送迎を依頼する身内が近くにいなかったり、公共交通機関が発達していなかったりし、外出が難しい問題がある。
 通院など、介護保険法や障害者総合支援法によるサービスでも受けられる移送支援があるが、目的や対象者が限定されたり、付き添いの乗車はできなかったりする
 
福祉有償運送の場合は、付き添いの乗車も可能で、利用目的は、通院や買い物、墓参りなど、事業者が定められる運賃は実費の範囲内と定められていて、目安としてタクシー運賃の半額以下とされている利用希望者は会員登録した上で、予約する
 事業は、
NPOや社会福祉法人などが主体になる。事業開始には、市町村やタクシー事業者らでつくる「運営協議会」の合意や、和歌山運輸支局への登録が必要。運転者は国土交通省の講習を受講する
 県内では、すでに
田辺市本宮町や、すさみ町、北山村など7市町村で運行されている。県は、新たに1年で13ヵ所、3年間で39ヵ所の整備を目指す。県内39ヵ所にある地域包括支援センターの管内1ヵ所ずつを目安に考えていて、全市町村をカバーしたい考え
 補助対象は、事業開始や、拡大のために必要な車両購入費用で、補助率は
2分の1。車両代の上限は280万円で、改造費用も同様で、上限が60万円。
 
問い合わせは、県長寿社会課高齢者生活支援室073・441・2522)へ。」


A『【問題提起】訪問型サービスDの有り方について(一考察) 小林泰進』
2015.8.18/全国移動ネット「理事メール」より)

■外出は健康の源
 総合事業を始めるにあたり、初めて厚生労働省の考え方の中に訪問型サービス
D(移動支援)という考え方が明文化されました。これまでにも点在する訪問や通所、その他の介護拠点を線でむすぶ移動の問題が大切であるとの認識はありましたが、「要支援1〜要介護2の認定調査結果」(2014年 生活支援コーディネーター中央研修資料)によれば、共通して「買物の自立」への充足度が際立って低いことが分かります。このことは“行きたいところへ行けるか否か”、すなわち“外出の自由度”がいかに高齢者の心身の健康へ大きな意味をもつものかが、データとして示されています。従って今回の明文化は、大変に貴重なことと思います。
 しかし、この課題は未だ充分に現場の状況が理解されていないように思います。多くの人に必要なことから、この助け合いのすそ野が広がることへの期待が強く、登録なしの福祉有償輸送が志向されている傾向がありますが、こうした視点と観点だけで、この重要な課題に対峙していいのか少々疑問を感じており、以下の提案を考えました。
■考えるスタンス
 ここでは、主に訪問型サービス
D(移動支援)について考えていきますが、障がい者、要介護者等、移動支援を必要とする移動制約者全体の中で考えていくスタンスを取りたいと思います。また、ここでは訪問型サービスD(移動支援)という言葉が使われていますが、障がい者への外出支援に関する同行援護や移動支援と同様、移動そのものの部分とその手段については、なんなんも触れられてはいません。すなわち訪問型サービスDは外出支援の移動そのものを除く部分的支援策と考えるべきものと思います。しかし高齢者に必要なことは外出の自由度を上げることで、移動そのものの手段を抜きには議論など出来るはずもありませんし、また同時に移動手段があるだけで外出の自由度が上がるわけでもないと思います。そこで観点を少し広げて考えてみることにしました。
■再度外出支援を考えてみると
 支援の対象者は外出困難者ということになり、そこには何某かの不足があるわけですが、その理由は最低でも“お金”“身体的能力”“機会と手段”の不足があります。今回、厚労省が高齢化という大きな潮流に目を向け、訪問型サービスに目を向けたことは評価に値しますが、冒頭にも述べたように点在する介護の拠点を線で結び、全体を機能させることを、このサービスに期するとすれば、その機能の仕方をもう少し細かく描き、どこの部分をどのように支援するのか?を整理すべきと考えます。
 訪問型サービス
Dには(移動支援)という言葉が使われていますが、厚労省の構想の中には上記三つの不足のうち、“お金”の面で提供する側のインフラ維持のためのお金について、少し考えられています。また、なんらかの移動手段で、移動する時の乗降の支援も想定されているようです。しかし残りの一つ、最も大切な移動そのものの手段はどのように想定されているのでしょうか。まさか移動の手段無しに“移動支援”が成り立つとは考えられません。
■外出支援を定着させるための課題
 外出支援の要素を大括りすると「車での運行」「乗降介助」「生活介助」の三つになるかと思いますが、これらを適正に運用するには、(
1)適正な技術に基づく安全性を求めること、(2)著しく違法でないこと、(3)市町村で適正に管理されていること、(4)適切な料金と報酬が介在することなどを整理し、それぞれ具体的な仕組みにしなければなりません。
(1)適正な技術に基づく安全性
 (
a)「車の運行と乗降」での安全性、および(b)「乗降と生活介助」での安全性の確保が必要ですが、身体能力と介助に関する資格は、逆相関の関係となります。当然、訪問型サービスDでは(b)は簡易なものでいいことになると思うが、(a)では利用者と関係なく適切な(資格もふくめ)技術を持って、安全を確保の努力をしなければならないと思います。すなわち障がい者の移動に福祉有償輸送の認定講習並みの安全確保が必要であるのと同様、多少の程度の差はあっても訪問型サービスDでも、相当の安全確保が必要であると考えるべきです。
 市町村が主体となり国交省の委託を受けて講習会を開き、実質的な安全への努力をするなど、工夫の余地はあると思います。現在、登録や更新にともなう「運営協議会」の主宰は、すでに市町村の義務となっており、それぞれの地域性に照らして妥当性を審議し、合意する仕組みは出来ています。となれば、その他はほとんど書類の問題ですので、権限移譲のハードルがそれほど高いものとは思えません。そこで、市町村への権限移譲を加速し、移譲された権限の下で、権限の範囲を従来の福祉有償輸送に加え、今回の訪問型サービス
Dにも広げて市町村登録をするなど、安定的で地域に合った管理の姿を志向すべきと考えます。
(2)著しく違法でないこと
 社会的理解の点から訪問型サービス
Dを今一度考えると、基本的には従来の移動制約者の範囲内の方々ですが、その数が日本の急激な高齢化に伴って増えることと、介護予防の必要性から更に数量負荷が大きくなることが、従来とは異なります。未整備だった福祉輸送の問題を、2006年に合法化出来たことは大きな節目ですが、国交省と言えど日本が直面する高齢化社会への急激な変化に目をつむることは出来ないはずで、再度、腰を上げ対応姿勢の改善を示す責任があると考えます。本来は前向きな姿勢で捉えなおして欲しいところですが、恐らく国交省はしないでしょう。しかし、なんもしないことの結果として、多くの負の側面が問題として噴出することは、容易に想像出来ます。
 難しい同行援護や、比較的重度の障がい者や要介護者の外出支援者は容易に増えていかないのが多くの市町村の現実でしょうが、前「要支援者」などバスで行くにはちょっとという方々の支援であれば、善意の支援者は多くおられるでしょう。今は善意に基づく支援なのですが、これらが広まっていった時、金銭的・安全性・支援の適切性などで問題が生じてくるでしょう。それらは全て“なんもしない国交省”の無策の責任であることは明らかです。
 いずれにせよ国交省としての「新たな指針」を出さねばなりませんが、その指針は国レベルで統一された詳細な決め事ではなく、裁量の余地を残した形で市町村へ移譲されるのが良いと考えます。
(3)地域で適正に管理されていること
 
2006年に厚労省と国交省双方の連携のもとに出された文章では、移動およびそれに関わる支援の大切さと、責任の重さを両省庁が認識された結果だと思いますが、基本的には今回の訪問型サービスDにも関連するものですから、再度、両省庁で認識を新たにしていただきたいと思います。その際、例えば“安全性”といった一側面からだけの配慮ではなく、このサービスに期待する拡張性にも両省庁が共に配慮をめぐらし、より良い管理のカタチに至っていただきたいと期待します。
 この訪問型サービスDには拡張性が必要なことから、直ぐに登録不要を推進する方向へ舵が切られますが、それは無管理がいいということではないでしょう。多くの関心事を比較する中で、より良い管理の方向を見出すべきではないでしょうか
いずれにせよ、訪問型サービスDは各市町村の合意の下に活動するものですから、なんらかの登録、委託、認可などの約束事が存在する訳です。従って介助の部分も手段を含めた移動の部分も、市町村の中で適正に安定的に管理されていくべきと考えます。
 今後、多くの方々の知恵を集め、全国移動ネットや「さわやか」の見解として、両省庁への高い説得力を持ったものになるよう期待をしています。
(4)適正な料金と報酬が介在すること
 これにも異論、反論がたくさん出ることでしょう。それを承知で「有償」と「無償」の意味を比較してみました。個人的には「無償」はたいへん良くないと思っており、安定的な地域の仕組みとして引き継いでいかれるためにも、「有償」であることは大切と思っております。私は「高齢者が外出によって、長く健康である」こと。そして「利用する側とサービスを提供する側との信頼関係」を重要視したいと思っています。
 しかし、これは必ず国交省に規制される問題ですが、国交省に質問を投げかけても
10年前のガイドラインが説明されるだけで、今後に必要な状況認識を踏まえた上での見解は、容易に出てきそうにもありません。意味のある見解を引き出すには、議論する相手の立場とレベルをよく吟味し、その中身も工夫した上で進めるべきと考えます。
 そもそも“ガソリン代並みの
\20/Kmなら登録なしでも可”とする根拠と狙いはなんなのでしょう? もともと国交省は望んで福祉有償輸送を始めた訳ではなく、営業車業界に気を遣いつつ、世の中の要求に抗しきれず、今の考え方と仕組みに至ったというのが本音でしょう。それ故、営業車業界は「料金を低く抑えておけば、得にもならないことをする輩は増えないだろう」という配慮と、「安ければ利用したい人が増えて、これをする輩が増えるのではないか」という心配とを秤に掛け、結局、する輩が増えないようにしておけば、業界の職場を守れるであろうということが、判断の基礎になっているのでしょう。そして、これを追認しているのが国交省で、結果として交通弱者のための福祉的移動手段が広まることを阻害し、高齢者の健康な社会生活の維持向上に背を向けることになってしまうのです。
 移動料金の妥当性については、地域差が意外と大きいことを理解しなくてはなりません。従って一律を求めることは、却って不自然と思いますが、“実費”とはどういうものであるべきかは、今回、必ず考え直すべきと思います。
2006年時点の不純な動機によって湧いてきたGas代のみとか、\20/Kmから脱却すべきではないでしょうか。
 実費の考え方については、
Gas代のみが実費とする根拠には相当に無理があります。まず以って、車を動かして他人を送るには、Gasの前に車そのものが不可欠です。また、最低の維持メンテ費用も要ります。更に任意保険も掛けずに他人をお乗せは出来ません。また時間を使わずして、このような支援活動も出来る人もおりません。この場合、支援活動・使用率により金額も変わりますが、考え方は整理できるはずです。

 福祉目的の移動の問題は、他の様々な福祉の事業を、実際の現場で機能させるための蜘蛛の糸です。一般的世の中においてさえ、“物流”は極めて重要です。ましてや福祉目的の移動の場合、“利用する人”が介在するため、より重要であると同時に、負の側面にも充分な注意を払うべきと思います。今回、私も一つの考察を試みましたが、充分な自信がある訳ではありません。訪問型サービスDの課題は、どこでも後回しにされがちですが、充分な時間を設けて、多面的検討をすべきもののように思います。」


■ 報告ならびに今後の課題討議:

(1)8月度〜の「運転者認定講習会」の開催
 ◎ 817、18日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
914、15日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
1012、13日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)

(2)「新しい総合事業実施のための府内市町村職員向け研修会」の取組み
 ◎ 831日、於:マイドームおおさか

(
3)「生活支援コーディネーター養成研修」の取組み
 ◎ 11月9日〜10日、於:シティプラザ

■次回運営委員会:9月5日(土)pm6:00〜8:00
於:NPO法人 日常生活支援ネットワーク事務所