151回運営委員会
7月1日に「関西STS連絡会」第151回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:7団体)
NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) NPO法人「アクティブ ネットワーク」(茨木市)
NPO法人「自立支援センターやお」(八尾市) NPO法人「移動サービスネットワークこうべ」(神戸市)
NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市) い~そらネットワーク(大阪市)
猪井博登(大阪大学 助教)


【議 案】

■ 資料関係:


①『大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会への「要望書」行動』(報告:関西STS連絡会

.「大阪府河北ブロック運営協議会・近畿運輸局大阪運輸支局「回答書」に対する私たちの見解表明」(2017年7月27日)
大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会会長 吉川 耕司 殿
 国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局 殿


 大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会における「登録」更新時の協議基準(実施要綱)についての私たちの
2017年5月26日付け要望書(1.事実確認、2.結論にいたる根拠)に関して、近畿運輸局大阪運輸支局の助言がなされ、河北ブロック福祉有償運送運営協議会の吉川耕司会長様のご尽力で作成された「回答書(2017年7月4日付け)」を受け取りました。日々、ご多忙の中をありがとうございました。

 回答文書の中に「条件」(「条件付き承認」「付した条件」など)という言葉が、全4頁の中で、
16箇所も出てきます。お気づきでしょうか。①~⑥までの説明が、すべてNPO法人 守口送迎とのやり取りとなっているため、吉川座長の心情が高ぶったためと想像できるのですが、私たちが求めているのはNPO法人 守口送迎が「どう言った」「いや、言ってない」、「なんとかして欲しい」「議事録の開示を」との要望を提出しているのでは、決してありません。私たちは圧力団体ではないからです。
 当該団体が首をかしげているとき、不満を表明したときに、決して“口頭”ではなく、協議基準(実施要綱)をきちんと示し、賛否両論にわたる議事録も市民に全面開示し、親切に説得に当たるべきだと訴えているのです。
 ※「寝屋川市においてNPO法人 守口送迎さんより“公文書の開示の申し出”をしてもらえば」とおっしゃることは、まったくの筋違い、誤解であります。(私たちが「個人情報を公開するように」と言うわけがないからです。)
 また回答文章に出てくる「留意事項」や「あくまで要望」なる表現に関しても、当然、口頭ではなく、また、いかなる団体、市民に対しても資料(議事録を含む要綱)を伴う説得力のある、平等な基準が望まれるものと、私たちは考えております。
 一方、「タクシーの上限運賃の概ね
2分の1の範囲内」(河北ブロック「運営協議会における協議の基準」)のみの基準で、「初乗り10~20分400円」でなければ条件付き承認の遵守ではないという論調は、余りにも荒っぽい運営協議会の運営ではないでしょうか。百歩譲って、そうすることが妥当であったとしても、その基準を示す場合に「協議基準(実施要綱)」を示して、各団体に協力をあおぐという手法を取るべきだと思います。(口頭での指摘や、あいまいな留意事項等という表現も避けるべきだと考えます。)

 「河北ブロック福祉有償運送運営協議会の“協議基準”は、大阪府下の箕面市を除き共通のものとなっており、少なくとも本ブロック独自の“ローカル・ルール”ではないことを申し添えます」(注:枚方市の“協議基準”も参考にしてください)に関してですが、今、国土交通省、各自治体等における協議・検討の中で課題として浮き上がってきていることは、そういう“ローカル・ルール”そのものであるということも、是非、一考をお願いしたいと思います。
 回答文書の中に、「福祉有償運送事業者の皆さんには、多くの住民の移動手段を確保するための重要な社会的役割を担ってもらっているという共通認識は、本協議会においても全委員が持っており、……すべての継続申請に関して協議を調え、事業が継続できるよう応援」「苦渋の決断を行わざるを得なかった」とありますが、是非とも、そうあっていただきたいものです。
 私たちの要望書(
2017年5月26日付け)の意味するところは、釈迦に説法であり、お恥ずかしいのですが、是非とも以下に示す参考資料(国土交通省「通達」文章)を今一度、吟味されることをお願いする次第です。

「■「運営協議会における合意形成のあり方検討会・まとめ」(2011年6月/国土交通省自動車交通局旅客課
(4)ローカル・ルールの適時適切な見直しについて:…(略)…
(5)運営協議会の適正な運営について:…(略)…

「■「
NPO等が実施する福祉有償運送の対象者、対価の明確化及び運営協議会の運営方法について」(国自旅第298号/2015年12月25日):…(略)…
 いずれも各地方運輸局自動車交通部長、沖縄総合事務局運輸部長、自動車交通局旅客課長宛に出されている通達文です。

 今回、私たちが提出した「要望書」と、河北ブロック福祉有償運送運営協議会・吉川耕司会長と近畿運輸局大阪運輸支局連名の「回答書」のやり取りには、論点の違い(勘違い)が存在する結果となりましたが、今後の関西における福祉有償運送「運営協議会」の円滑化に向けた、お互いの問題提起になれば幸いだと考えております。
 現在、各地域で生活されている移動制約者の皆さんの移動手段の確保が、社会的課題として逼迫した状況を迎える中、今後の河北ブロック福祉有償運送運営協議会における運営が、私たちが再登録の説得を続けてきたNPO法人 守口送迎にとどまらず、各登録団体、新規申請団体と心を寄せ合い、福祉有償運送の足元からの充実に向けて、丁寧に運営協議会の運営にあたられることを願ってやみません。
 ※「要望書(
2017年5月26日付け)」「回答書(2017年7月4日付け)」、本「見解表明(2017年7月18日付け)」は、近畿運輸局自動車交通部旅客二課、並びに国土交通省本省にも報告させていただきます。
関西STS連絡会 代表 伊良原 淳也 事務局 柿久保 浩次」

.「近畿運輸局管内の福祉有償運送運営協議会における相次ぐ「協議が整わず」結論問題に関する報告」(2017年8月1日)
国土交通省自動車交通局 殿
近畿運輸局自動車交通部旅客二課 殿


 私たちは、関西の地で福祉有償運送を取り組む市民団体・個人、学者・研究者のネットワーク「関西STS連絡会」(2001年11月発足、登録会員400団体・個人)と申します。この間、地域の障がい者、高齢者、移動制約者の皆さん方の“移動・送迎の手段”を確保するため、情報交流をはじめ調査・研究・研修等の活動を行いながら、支援の力量を高めていくための市民活動に取り組んでまいりました。
 国土交通省における「高齢者・障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法:2000年)」以降、とりわけ福祉有償運送の「道路運送法」改正(2006年)、「交通政策基本法」(2013年)、「改正・地域公共交通活性化・再生法」(2015年)~「地域公共交通網形成計画」という流れを創り出してこられたご努力に、深い敬意と感謝を捧げる次第です。
 地域の日常活動を通じて“少子高齢化社会”“交通空白地”における「移動手段の確保」が喫緊の課題であることを、私たちはこの間、「住み続けるための送迎の確保をどうしていくか」などの相談が、行政を含めて急増していることの中で、つくづくと実感してきました。
 ところがこの2~3年の間に、大阪運輸支局、神戸運輸監理部管内の福祉有償運送運営協議会(以下「運営協議会」)において、「運営協議会協議基準」に具体的表記もしないまま、登録更新時に「協議が整わなかった」と結論づけられ、福祉有償運送から撤退していくというケースが何件も報告されているのです。「協議基準」が極めてあいまいなまま、「実施要綱」のような基準もなく、「議事録」も市民に開示されないままの運営協議会の運営実態が続いているのです。
 私たちが、地域の移動送迎サービスのすそ野を拡げていくために取り組んできた「運転協力者認定講習」は5,175名の修了者(2017年3月末現在) を数えておりますが、大阪府下の福祉有償運送の登録団体数は“153団体(2007年3月)”→“140団体(2014年3月)”へと逆に減少しているのです。
 今回、国土交通省自動車交通局と近畿運輸局自動車交通部旅客二課様宛に資料を提示して、報告を行うことにした運営協議会の運営事例とは、大阪府河北ブロック運営協議会(会長:吉川耕司氏、近畿運輸局大阪運輸支局審議官も参加)が、今年(2017年)3月29日に登録更新の手続きを行った「NPO法人 守口送迎」に対して「協議が整わず」という結論を下し、当該法人が“福祉有償運送からの撤収”を利用者さんに通知したとの報告と相談が、関西STS連絡会に入ったことをめぐる進捗状況の報告です。
 受けた報告によると、「運送の対価表の金額変更」と「運転協力者の年齢制限」を書面ではなく、口頭で告げられたということでした。報告を受けて私たちは、「NPO法人 守口送迎」に対しては再・更新の手続きの説得を行いながら、大阪府河北ブロック運営協議会と、近畿運輸局大阪運輸支局に対して「事実確認」と「協議内容の公開と是正を求める要望書」の提出を行いました【資料添付】。
 こうした運営協議会の運営実態は、関西各地で大なり小なり顧みられることなく進められていることが、私たちの月次連絡会議の中で、その都度、報告されていたこともあり、国土交通省自動車交通局、近畿運輸局自動車交通部旅客二課様にこうした資料を届けることにより、関西各地での運営協議会の運営実態の点検のきっかけになればと考えたからです。
 今年(2017年)の6月に発表された「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」(国土交通省)の「中間とりまとめ」も、残された課題についての検討を継続されると聞いており、私たちも自らの領域において「移動手段の確保」に向けた取り組みを強めながら、それぞれの地域の創成・再生とまちづくりの大切な施策の一環として、福祉有償運送の足元からの推進を図って行きたいと思っています。
 私たちは、2006年「道路運送法」改正の原点は、各地で開催されている運営協議会が、地域における障がい者、高齢者、移動制約者の皆さんの「移動手段を確保する」ためのものとして、新規参入団体を増やし、登録団体の更新継続の支援をするものとして運営されていくこと。そのためには、きちんとした「実施要綱」や「議事録」を示しながら、時代錯誤の“許認可の審査”方式ではなく、時には説得をおこない、登録団体を支えるための運営協議会となるべきであると考えています。
 最後に、国土交通省自動車交通局、近畿運輸局自動車交通部旅客二課が、各地での移動制約者の実態に即した「移動手段の確保」施策の促進に向けて、各運営協議会の点検を実施されることを、切に要望する次第です。

【添付資料の提出リスト】
①大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会宛「要望書」(
2017年5月26日 関西STS連絡会)
②国土交通省近畿運輸局自動車交通部/国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局宛「要望書」(
2017年5月26日 関西STS連絡会)
③関西
STS連絡会宛「回答書」(2017年7月4日 大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会/国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局)
④大阪府河北ブロック福祉有償運送運営協議会/国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局宛「回答に対する私たちの見解」(
2017年7月27日 関西STS連絡会)
―以上―」

②『《国土交通省》高齢者の移動も「互助」推進/「許可・登録不要」を明確化へ』(2017.7.14シルバー新報)
「 国土交通省は、高齢者の移動の足を確保するために「互助」による輸送の推進に踏み切る。登録など道路運送法の手続きなしでできる移送サービスの枠組を現在より明確にすることで、介護予防・日常生活支援総合事業のサービスとしても取り組みやすくする。自治体の「第7期介護保険事業計画」に盛り込んでもらえるよう、厚労省とも連携していく。

無償ボランティアを活用
 6月末にまとめられた「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」の「中間とりまとめ」に盛り込まれた。同検討会は、「高齢者の交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」で、運転に不安をもつ高齢者が自家用車に頼らなくても生活できる環境の整備を重要課題としてあげたことを受け、今年、3月に設置されていた。
 これまでも公共交通機関の維持、活性化の施策は打っているものの抜本解決にはいたっていない。今後は、無償のボランティア団体や地域の助け合い活動の中で移動手段を確保していくことも重要性を増すという認識のもと具体策を検討した。
 道路運送法はバスやタクシー事業者を守るという視点で、福祉的な移送サービスには規制的な運用が行われてきた。目立たないが、大きな政策転換と言えるだろう。
 福祉的な移動・外出支援の道路運送法上の扱いは複雑だ【表】。介護保険ができて、訪問介護事業所が許可を得ずにサービスの一環として、利用者を乗せることが白タク行為として問題になり、タクシー業界から規制を求める声があがった。NPO法人等が行っていた身体障がい者や高齢者等の移送サービスは、長年、黙認されてきたが、併せて整理された。2006年10月に施行された改正道路交通法では、「自家用有償旅客運送」として登録制度ができ、福祉も位置づけられた。
 登録にあたっては、タクシー事業者やタクシー運転手の労働組合、住民、運輸支局などで構成される運営協議会での合意が必要となり、参入へのハードルがあがった。
 事業として行わない場合は、登録の必要がないはずだが、自治体が運行を行う団体に対して車両費用を補助したり、貸し出したりすることを運送の対価とみなして「自家用福祉有償運送」の登録を指導する運輸局もある
 「介護予防・日常生活支援総合事業」では、国のガイドラインに「訪問型サービスD」として移動・外出支援が位置づけられたが、ほとんど活用されていないのも、運輸局の指導の曖昧さがあり、手が出しにくい状況があるためとされている
 「中間まとめ」では、推進策として「互助」による移動・外出支援に対する行政などの支援のどこまでが対価と認められないかなど、具体的に例示する9月末までと期限を切った団体が自治体の補助を受けリースした車両を無償ボランティアのドライバーに貸し出す。デイサービスの送迎車を空き時間に無償ボランティア団体に貸し出したり、市町村が団体に委託料を支払い自治体保有の車両を提供するなどのケースが想定されている。地域の関係者が取り組みやすいように許可・登録がいらない輸送のモデルについても、「パンフレット」で情報提供する
 また、厚労省と連携し、9月末までには第7期の「介護保険事業計画策定」に間に合うように、互助により実施可能な輸送サービスについて、実施可能なモデルの情報提供を行うとしている。

【道路運送法に基づく移動・外出支援】
.許可
①福祉輪送事業限定許可(介護タクシー事業)
 要介護者等に利用者限定、青ナンバー車両で運転手は2種免許取得。流し営業や乗り合いはできない。
②4条ぶら下がり許可
 訪問介護事業所が①の許可を受けた場合、ヘルパーが許可を受けると白ナンバーで有償運送ができる。
.登録(自家用有償旅客運送)
 営利を目的としないのに妥当な対価。運営協議会や地域公共交通会議で認められることが必要。
①福祉有償運送:要介護者等に利用者限定
②その他:「公共交通空白地有償運送」等
.登録や許可がいらない活動形態
 有償運送でない場合(ガソリン代等の徴収は可)→「互助」推進のために明確化するとされた部分

■総合事業GLに反映
 「中間とりまとめ」を受け、厚生労働省も6月28日付けで改正した「介護予防・日常生活支援総合事業」のガイドラインに交通部局との連携を盛り込んだ。
 福祉有償運送の合意形成をする運営協議会のメンバーに生活支援コーディネーターを入れ、地域のニーズを反映させることなども提案。
 要支援者等だけでなく障がい者も対象にした移動支援も総合事業の対象となることを明記。人数で按分するなど合理的に総合事業の対象を確定することで、運営費補助の対象になるとしている。」

③『資料『高齢者の移動手段の確保に関する検討会「中間とりまとめ」』(2017年6月 国土交通省)
はじめに
 高齢化の進展に伴い、交通死亡事故に占める高齢運転者の割合は近年上昇している。本年3月には、認知症対策を強化する改正道路交通法が施行された。今後、さらなる高齢者の増加が見込まれる中、運転に不安を持つ高齢者が、自家用車に依存しなくても生活できる環境の整備は、極めて重要な課題となっている。…(略)…
 高齢者の移動手段としては、バス、タクシーなどの公共交通機関が基本的に重要な役割を担っている。他方で、歩行距離の制約などの高齢者の生活実態や、公共交通機関の現状を考えると、公共交通を補完するボランティア団体の活動や地域の助け合いの中で、高齢者のための移動手段を確保していくことも、今後、重要性を増すものと考えられる。
 本検討会においては、こうした認識の下、当面、公共交通機関、ボランティア輸送等を通じて、まずは高齢者の移動手段の選択肢を拡げ、そのサービスの提供を拡大することが重要であるという観点から、そのための具体的方策に重点を置いて検討を行った。
 もとより、様々な交通手段を有機的に組み合わせてそれぞれの地域で持続可能な交通体系を構築することは、今後の地域づくりにおいて極めて重要な課題である。…(略)…高齢者の移動対策については、こうした各方面の対策を連携して進めていくことが重要である。

1.公共交通機関の活用 (…略…)
2.貨客混載等の促進 (…略…)

3.自家用有償運送の活用
 公共交通機関では対応できない場合には、高齢者の移動手段として、自家用有償運送の活用を推進していく必要がある。
(1)検討プロセスのガイドライン化
・地域交通ネットワークの担い手を適材適所で円滑に導入するために、交通事業者の活用可能性や交通事業者への委託による自家用有償運送の検討を行う等の検討プロセスの明確化や、当該検討プロセスを一定期間かけて行ったことをもって自家用有償運送の導入に必要な合意が成立したとみなす取り扱いの確立など、自家用有償運送の活用に資する手続の合理化・効率化を図るガイドラインを策定する。〔2017年度中実施〕
(2)市町村が主体となる自家用有償運送の活用の円滑化
・持ち込み車両の使用はNPOが主体の場合に限定されてきたが、市町村が主体となる場合にも可能とする。〔2017年8月実施〕
・市町村が主体となる場合には、路線運行しか認められてこなかったが、区域運行も可能とする。〔2017年8月実施〕
(3)地方公共団体等に対する制度の周知徹底
・自家用有償運送の導入等に係る手続き、上記2.(1)の地域交通の検討プロセスに係るガイドラインや運営協議会の運営方法等について、地方公共団体等向けのハンドブックを作成し、関係者への配布・周知徹底を行う。〔2017年度中にハンドブックの作成、その後速やかに配布・周知を実施〕

4.許可・登録を要しない輸送(「互助」による輸送)の明確化
 高齢者の移動ニーズに対応するためには、地域における助け合いも今後重要性が増すものと考えられる。介護・福祉分野においても、こうした活動に一定の役割が期待されている。一方、運行管理や整備管理、事故発生時の責任の所在の観点で、バス事業・タクシー事業や自家用有償旅客運送と異なる。これらを踏まえつつ、適材適所の移動手段の導入に資するよう、営利を目的としない「互助」という観点から、許可・登録を要しない輸送についてその考え方の明確化を図る必要がある。
(1)ルールの明確化
・道路運送法上の許可・登録を要しない輸送について、ガソリン代等の他に一定の金額を収受することが可能な範囲を明確化し、関係者に周知する。〔2017年度中検討・結論〕
・営利を目的としない「互助」による輸送のためにNPOが自治体の車両を活用するなど、輸送の対価に当たらない支援を例示する。2017年9月までに実施〕
(2)実施にあたっての条件整備
・事故発生時の責任の所在、保険の加入状況等の明示に関する考え方や運転者の教育の必要性について明確化するとともに、新たな保険商品の開発を働きかける。2017年度中検討・結論〕
(3)「互助」による輸送の導入に関する情報提供
・上記(1)(2)を踏まえ、地域の関係者が取り組みやすいよう許可・登録を要しない輸送のモデルについてパンフレット等で広く情報を提供する。2017年度中実施〕

5.福祉行政との連携

 介護保険制度等によって行われる輸送サービスについて、高齢者の移動手段として活用できるよう、環境整備を図るとともに、交通事業者、介護事業者等の相互の理解を促進する必要がある。
(1)地域における分野横断的連携
・総合行政の担い手である地方公共団体の内部において、福祉部局と交通部局の連携(政策立案、情報共有、意識改革等)が図られるよう、周知を徹底する。〔速やかに周知〕
・介護保険制度の地域支援事業(生活支援体制整備事業)に基づき地域に設置される「協議体」と、交通関係の地域の協議会(地域公共交通会議、運営協議会、地域公共交通活性化再生法に基づく協議会)との間の、具体的な連携の方策(相互参加等)を提示することにより、相互の理解の促進と一体的な対策の検討を実現する。〔速やかに周知〕
(2)介護サービスと輸送サービスの連携
・介護保険制度の地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に基づいて地域で実施される移動支援(移送前後の生活支援:訪問型サービスD)が、事業の対象である要支援者等以外の高齢者等に対しても行われる場合の事業の位置づけや助成の対象範囲を明確化する。〔2017年7月実施〕
・第7次介護保険事業計画の作成に資するよう、実施可能なモデルの情報提供を行い、同サービスの普及・拡大を目指す。〔2017年9月までに実施〕
・交通事業者等が介護サービスを実施しようとする場合又は介護事業者等が輸送サービスを実施しようとする場合のため、それぞれに必要な要件・手続事項等の明確化を図るべく、双方の事業制度及び関係性について整理の上、情報を提供する。〔2017年度中実施〕

6.地域における取組に対する支援
 高齢者の移動手段の確保については、地方公共団体が創意工夫を行いながら主体的な役割を果たす必要があり、国としても、高齢者の移動手段の確保を含む地域公共交通網形成計画の作成をはじめとし、地方公共団体の取り組みを促進していく必要がある。
(1)地方運輸局の取組強化
・改正地域公共交通活性化・再生法により、地方公共団体が地域公共交通ネットワークの構築の中心となるという大きなパラダイムシフトが行われた。改正法に基づく取組の定着には時間を要することを踏まえ、その推進に向けて、担当職員の業務チェックリストの作成・見直し等による継続的な意識改革を行うとともに、取組事例の収集・提供により、地方公共団体の取組支援を行う。〔引き続き実施〕
(2)制度・手続等の周知徹底
・自家用有償制度の導入に関する手続(既述)等を含め、地域の公共交通にかかる制度や手続が地域において十分に理解されていない例が散見されるため、地方運輸局等を通じ、地方公共団体等に対してさらなる周知徹底を図る。〔引き続き実施〕
(3)地域主体の取組の推進
・持続可能な地域公共交通の実現を目指す地方公共団体に対し、地方運輸局が企画立案段階から実施段階まで、助言、調整、情報提供等を通じて幅広く支援する取り組みを進めてきており、引き続き対応を強化する。
〔引き続き実施〕
・地域運営組織等による高齢者の移動手段確保に要する経費に対する補助への地方財政措置を明確化し、地方公共団体に周知することにより、その取組を後押しする。2017年6月末までに文書発出予定〕
(4)モビリティ・マネジメント活動の推進
・高齢者に対する情報提供を行うとともに、公共交通利用への住民の参画を促すため、将来運転ができなくなった場合を意識させる啓発活動や、公共交通機関の必要性を強調する広報など、地方公共団体等が行う幅広い年齢層に対するモビリティ・マネジメント活動を支援する。〔引き続き実施〕

おわりに
 地域の交通を巡る環境は、高齢化や人口減少の急速な進展、地域の交通事業者の経営状況の変化等、需要と供給の両面で大きく変化している。(…略…)公共交通機関はもちろん、地域での互助等も含め、地域においてどう適応していくかという、総合的な観点からの検討が不可欠である。加えて、その検討に当たっては、「交通/介護」、「旅客/貨物」、「事業用/自家用」といったこれまでの事業分野、行政区分等の縦割りを越え、地域の移動に関する様々な需要や課題を同一の俎上に載せ、関係する全ての主体が共に議論することが非常に重要である。
 このため、国、交通事業者、地方公共団体、移動に関わりのある分野(介護、物流、観光等)の関係者が、それぞれの専門領域を越えた総合的な観点で議論を行い、高齢者の移動手段の確保に向けて十分な連携・協働を図ることが強く求められる。」


今後の取り組み等の討議:

1)『送迎支援があれば 病院・買い物・おでかけができる街 橋本市セミナー』の開催
 ■日時:2017年9月9日(土)13:00~16:0012:30開場)
 ■会場:橋本市教育文化会館
3階(橋本市東家1-6-27
 ■主催:
NPO法人 ささえあい橋本  ■共催:関西STS連絡会
 ■後援:橋本市(申請中)
●基調講演:「移動手段に困っている住民の移動・外出を支える地域交通網の形成に向けて」
     
(講師:三星昭宏・近畿大学名誉教授、関西福祉科学大学客員教授)
●課題提起①:「米原市の高齢者の移動・外出を支える施策とサービスをどう創るか」
     (報告:滋賀県米原市健康福祉部 くらし支援課 亀山芳香)
●課題提起②:「介護予防・日常生活支援総合事業(訪問型
Dなど)の支援サービスへの取り組み」
     (報告:橋本市いきいき長寿課)
●活動報告:「地域での移動支援活動の報告」
(報告:NPO法人 ささえあい橋本)

28月度~の「運転者認定講習会」の開催
 ◎ 8月21、22日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
9月11、12日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
9月14、15日/橋本市「運転者認定講習会」(於:和歌山県橋本市)
 ◎
10月16、17日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
11月13、14日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)

■次回運営委員会:8月5日(土)pm6:00~8:00
於:NPO法人 日常生活支援ネットワーク事務所