154回運営委員会
11月4日に「関西STS連絡会」第154回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:6団体)
NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) 伊良原淳也(関西STS連絡会)
NPO法人「自立生活センターやお」(八尾市) NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市)
三星昭宏氏(近畿大学・名誉教授) い~そらネットワーク(大阪市)


【議 案】

■ 資料関係:


①『「くらしの足を考える全国フォーラム 2017(概要)(2017.10.28 於:東洋大学)」』(報告:移動ネットおかやま 中村守勝)
■基調講演:「地域交通と自動運転」鎌田實:東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
 超高齢社会の日本の現状は、高齢化率27.7%、2030年までに30%超、2055年には40%に達する。人口はすでに頭打ちで、これから顕著に減少傾向、少子化傾向も続き、子ども・生産年齢が減り、高齢者があるところまで増える。将来のきちんとしたビジョンが描かれていないのが問題。
 大都市中心部の交通は、当面、現在の姿が続く。郊外部では、昔のニュータウン等で高齢化が進み、通勤・通学需要が減るため、公共交通は減少傾向。地方都市ではマイカーが主流で、公共交通の維持は厳しい。しかし、ある程度の人口規模であれば、運転断念層を取り込める可能性がある。過疎地域では、公共交通の事業性やドライバ不足の問題で厳しい。医療・介護は、地域包括ケアの展開、介護予防総合事業の開始等。
 路線バスやコミュニティバス・デマンドバス・乗り合いタクシー、タクシー、
STS・自家用有償運送、登録不要の無償運送を、どのように組み合わせていくか。自家用有償運送の制度があるが、ハードルが高くて会議に乗せられないとか、実際の運営は厳しく持続性に難があるという指摘もある。今回の議論(高齢者の移動手段の確保に関する検討会)で、事業者が賛成しなくても、自治体が必要として進められるようになる。さらに貨客混載、スクール活用なども。
 登録不要の無償運送をどう考えるか。互助の助け合いがないとやっていけないコミュニティがある。厚労省や総務省の移動支援のスキームも、これを想定している面もある。これまでは、自家用有償運送のハードルが高くて、無償を無理してやっているところも少なくない。今後のことを考えると、条件を設定して、それを満たせば一定程度の無償運送が役割を果たせるように整備をしていく必要がある。特に自治体の交通担当と福祉担当が連携して、こういった範囲の移動支援をうまく実現していくべき。

パネルディスカッション「~大いに語ろう、くらしの足の原点から自動運転まで~」

■未来に向けて新しい芽
三星昭宏:近畿大学名誉教授)
 「地域の足の確保」を、「許認可」行政から自治体・市民・事業者による「まちづくり」に。公共交通再生とまちづくりは、これまでの「総合計画・都市計画マスタープラン」から脱却し、助け合い交通のさらなる規制緩和へ。
「高齢者の移動手段の確保に関する検討会・中間とりまとめ」(
2017年6月):
①公共交通機関の活用 ②貨客混載等の活用 ③自家用有償運送の活用 ④許可・登録を要しない輸送(互助による輸送)の明確化 ⑤福祉行政との連携 ⑥地域における取組みに対する支援。
 
これらに対する今後の課題(三星私見)
 ③について、地域・風土にあった参画・協働による地域交通。
 ②④について、統合と推進。さらなる規制緩和と推進を。
 ⑤これからの最大のポイント「総合事業D」の活用。
 ⑥自治体・国の支援の方向性を明確化。

【事例紹介】
A.枚方市:福祉有償運送のあゆみと経験:
 
2003年8月から福祉移送サービス特区開始。当初3団体(社会福祉法人)5台から、最盛期には約20団体・共同配車センター・福祉タクシーとも連携。当初から現在まで、市がサポートをしている。NPO・社会福祉法人の混在。当初の障がい者サービスから、高齢者介護保険との連動に移行してきた。ニーズは多いが、団体数は減少気味。経営問題。施設送迎が普及。運転手不足(運転手の高齢化、市のPR不足)。運営協議会等での、手続きの煩雑さ。当初のボランティアによる障がい者・高齢者移送サービスから変質ぎみ。
(今後の課題)
 経営の自由度を高めること。この
15年間で運営協議会にて不要とされたケースはなかった。⇒運営協議会は必要なのか? 無償運送と統合すべきでは? 再度「助け合い交通」として、市民と市の共同作業に。
 協議会事項(必要性、対価、区域)は、窓口でよいのでは。「公共交通会議」への一元化? 公共交通会議と福祉との連携や、総合事業
Dとして展開も。
B.富田林市不動ヶ丘:無償運送で助け合い:
 丘陵部の団地が高齢化により交通困難区域になり、
2014年から高齢者の移動支援を始めた。2015年から団地自治会の下部組織から独立した助け合い組織により、無償運送で継続することとなった。この間、富田林市公共交通会議が支援していたが、運転手への些少の謝礼をめぐって近畿運輸局の「指導」が入って、謝礼がゼロになった。また、市が車両のリース代を3年間補助しようとしたが、近畿運輸支局がNOと。
 今回の中間答申で車両の援助は認められることになったが、継続のためには運転者への寸志は必要であるため、これも認められるべきではないか? 公共交通空白地有償運送と無償運送の垣根を乗り越えたい。「助け合い交通」を公共交通を補うものとして、公共交通会議が位置付けて増やす政策を持ちたい。
 地域のコミュニティ活動と連携して地域活性化に貢献する活動が、今後の地域活動のポイント。日々増える公害団地の取り組みの典型例。市内で同種の芽が増えてきた。
C.米原市・橋本市:高齢者介護予防と日常生活支援事業(D)、公共交通会議との連携:
 滋賀県米原市と和歌山県橋本市は、関西では先進である。地域寄り添いサービス事業:地域訪問型サービス事業と一体的に行われる移動支援や移送前後の生活支援。高齢者のみの支援の必要な世帯に対し、必要な支援を行う。要支援1=週1回、要支援2=週2回、補助金250円/回。地域支えあいセンターの設立。
(今後の課題)
 交通政策だけでなく、まちづくり政策と連動すること。人材育成、ノウハウ蓄積、福祉施策+交通施策+まちづくり施策。垣根を取り払う市政とは?
(参考)米原市は公共交通会議により、この秋からコミュタクシーの全市展開。ゾーン制料金導入。コミュタクシーと一般タクシーのシームレス化を導入。コミュタクシー関西最大級となる。今後、この施策と上記福祉事業を連動する。

■「なぜ16万人の秦野市に公共交通の専門部署ができたのか」大津太郎:神奈川県秦野市役所都市部公共交通推進課課長代理)
 今後の取り組みとして、「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」を受け、
5月より福祉部局(高齢者支援担当)と都市部局(まちづくり、公共交通)による職員の連携を開始。はじめに管理職等による打合せを実施(高齢者支援担当課長、担当職員、都市政策課長、公共交通推進課長、課長代理が参加)。職員間で知識、問題意識の共有をするための方策を検討。
 高齢者支援担当職員等へ、今後の市のまちづくりの方針や考えを説明し、高齢者に関する問題点を連携して取り組む。高齢者支援担当から地域包括支援会議への出席要請を受け、都市部関東職員が会議に出席し、問題点(高齢者の移動手段の確保、介護サービス以外の高齢者への支援等)を共通認識する。
 今後は、福祉部局、地域包括等と共通認識できた問題点について、解決できるような施策を連携して検討していく。なお、高齢者支援担当が持っている各種データを、今後の公共交通需要予測や立地適正化計画の基礎資料に反映させ、公共交通再編の基礎資料をアップグレードする。
 課題と対応について、乗合バスは利用者の減少と、運転手不足。減便等の路線再編の相談があり、バス路線沿線の自治体との協議によるバスの利用促進と改善要望の実現。小学校への
MM(モビリティ・マネジメント)教育の推進による、公共交通の意識づけを行う。乗り合いバスに乗ることが難しい高齢者等については、福祉部局と他の移動手段の導入を含めて検討する。
 建築、住宅部局、防災部局と連携し、交通事業者の災害時の緊急協力を前提に運転手の住居について、市営住宅等への入居枠を設ける等、運転手の人員確保の取組支援を検討する。また沿線自治会や運行事業者と連携し、路線やダイヤの見直し、停留所の新設、廃止を実施して、利便性向上に努める。

■「介護保険制度の動きと移動支援」遠藤準司:全国移動サービスネットワーク理事)
 これまで介護保険で使えていた生活支援サービスが対象外に。⇒公助から、共助・自助へ。また「要支援
12」は、保険給付から総合事業へ。⇒総合事業へ移ると何が変わるか? これまで、全国一律だった介護サービスが、市町村独自のサービスへとなり、地域によってサービスに違いが出てくることになる。
 厚労省は「ガイドライン」を発出(
2014年7月)。⇒地域格差の是正を図る⇒訪問型サービスD(移動支援)が盛り込まれる。そして地域包括ケアシステムの構築には、多様な主体による生活サービスの重層的な提供が必要となる。
〇総合事業で移動支援に取り組む自治体は、全国的に少数。⇒「道路運送法」との調整に難航。⇒移動の問題に対して、交通と福祉でそれぞれが別々にアプローチ。
〇「高齢者の移動手段の確保に関する検討会(中間とりまとめ)」によって、国交省と厚労省の解釈のすり合わせが進んでいる。⇒事務連絡の発出も活発化。
〇生活支援が、さらなる給付抑制に向かう中、住民による住民のための移動支援の早期取組が期待される。⇒住み慣れた地域で、だれもが最後まで暮らせるまちづくりを目指して。

【感想】最近の大規模なセミナーやフォーラムは、制度や技術の変化が速く、それに間に合わせようとするように盛りだくさんのゲストと内容を短時間で伝えようとするために、講師の持ち時間が少なく、逆に内容が伝わり切れなくなっている。どの講師の話も、もっと時間をかけて聞きたいと思うのだが、如何せん講師も参加者も全国からきていることもあって、限られた時間での発言となった。内容も雰囲気も参加者の割合も、全体的にアカデミックな感じであった。グループ討議も研究者が多かったような気がする。(中村守勝・記)
以上」


②『「特集:くらしの足全国フォーラム2017」より』(2017.11.20 東京交通新聞)
「 少子高齢化、人口減少に突き進んでいく日本社会で、持続可能なくらしの足の確保のために今後、重要性を増す交通と福祉の連携。そして期待される自動運転――。初日の「概論・ディスカッション」では、くらしの足の原点から自動運転まで幅広いテーマを掲げ、鎌田実・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の基調講演、三星昭宏・近畿大学名誉教授、大津太郎・秦野市都市部公共交通推進課課長代理、遠藤準司・NPO法人全国移動サービスネットワーク理事、佐治友基・SBドライブ社長兼CEOの4人を迎えてのプレゼンテーションと討議が行われた。
 鎌田教授は「2050年に人口1億人を割り、経済力の維持へ生産性を上げねばならない一方、医療・介護費用が膨大になる。介護予防や健康寿命、移動の問題も含めて大きなビジョンを描けていないのが問題」と指摘。国交省の「小さな拠点とネットワーク」や厚労省の地域包括ケアシステム構築を紹介しつつ、成功させる困難性に触れた。自動運転には「期待が持たれるが、交通の事業としての成立は、まだこれから」とした。
 「福祉交通の関係の大家」と紹介された三星名誉教授は、生活交通の崩壊と課題、鎌田教授が座長を務め、自らも参画した国交省「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」の6月の中間とりまとめなどに触れたほか、携わってきた自治体の事例を紹介。特に「関西では滋賀県米原市、和歌山県橋本市が先進だが、高齢者介護予防と日常生活支援事業(訪問型サービスD)の総合事業の実施と公共交通会議との連携の流れが出てきた。まちづくり、福祉の行政を分けず一緒にやるのが、これからのポイント」と強調した。
 秦野市の大津課長代理は、神奈川県央西部に位置する人口16万人の市で、不採算バス路線の維持・確保と乗合タクシーなどによる交通空白地の解消、課題を解決できる職員の育成と組織作りに取り組み、一定の成果を上げたと紹介。「高齢者の移動手段確保検討会」の中間とりまとめを受け、福祉、都市の両部局の職員の連携に取り組み中とし、「地域交通を支える事業者と行政部局間の連携で、公共交通を持続可能なものにしていきたい」と述べた。
 全国移動サービスネットワークの遠藤理事は、介護保険制度で4月から始まった軽度者(要介護12)向け総合事業に「移動支援(訪問型サービスD)」が盛り込まれたことを紹介。保険給付事業でなくなり、市町村独自サービスになったが、「総合事業で移動支援に取り組む自治体は、全国的に少ない。原因は道運法との調整の難航」と指摘。ただ国交、厚労両省の解釈すり合わせと事務連絡も活発に出始め、「住民による住民のための移動支援の早期の取り組みが期待される」とした。
 自動運転の事業化に取り組むソフトバンク子会社・SBドライブの佐治社長は「マイカー依存の地方で、運転ができなくても移動でき、くらしの足を支える一つの手段。大事なのは『走行安全』と『乗客安全』」と強調。自動運転バスから着手し、2018年に各地域でモデル実証実験、19、20年にバス会社に販売し、2年の試用期間に問題点を洗い出し、21年からメーカーと量産体制に入りたいとした。過疎地や中山間地、地方都市の自治体と実験の協定を結んでおり、25年には1万台走行の青写真も示した。沖縄の混在交通下での実験の経験も交え「地域住民の理解も重要。技術だけで解決できないことを協議していきたい」とした。

行政 人材育成と交流人事必要
 鎌田教授をコーディネーターに登壇した4氏が討論。「交通と福祉の連携」をめぐって、三星氏は「福祉部局の方は使命感に燃えているが、市政全般の中で考える習慣がなく、交通部局は福祉的センスがない。先進的な自治体が道を切り開くしかない」と指摘。秦野市で福祉部局から交通部局に異動した大津氏は「福祉は配属後から目の前に困った方がいて対応に追われる。将来ビジョンを見るまちづくり部署と、すり合わない部分があるのは普通。互いの仕事の理解を、管理職から始めている」と現状を示した。遠藤氏は「高齢者の移動確保に関する検討会」中間とりまとめを受け、「地方でも福祉と交通が一緒の場を持って、問題解決していく取り組みに期待したい」と述べた。
 鎌田教授は柏市での経験なども交え、行政職員の人材育成、交流人事などの必要性を指摘。秦野市の取り組みの成果に期持した。
 「自動運転」をめぐり佐治氏に各氏が質問。三星氏は前段で「未来の新しい芽」と評価しつつ、「商売だけでない、福祉を含めた人間生活をこうしたいという技術の社会性」の有無を問いかけ。佐治氏は地方で身内が重い病気になった実体験から「交通空白地をなくそうという思いで、自動運転を始めた」と述べ、「あと30年、50年は自動と手動の運転が混在し続ける。必ずしも都市部のバスが自動運転になる必要はなく、地域にプラスになる地方から実走させ、ビジネスモデルも合わせていきたい」と展望。三星氏は「素晴らしい志だ」と述べた。
 大津氏は住民が高齢化した団地内からバス停までの足、遠藤氏はデイサービス送迎時の車の集中の解決策として、期待を述べた。佐治氏は「何とかならないか、というところにチャンスがある。人と乗り物と目的の最適マッチングにIT、ビッグデータを活用していきたいが、机上の空論ではなく現場からヒントを得ることが一番の近道。勉強したい」と応えた。
 最後に「色々な交通モードと人口規模や地理的状況の関係を研究し、現場でも頑張りたい」(三星氏)、「移動に困らない地域を作れるようにしていきたい」(大津氏)、「総合事業の利用者は体調が良ければ支援の担い手になれる。理解を」(遠藤氏)、「最終的にまちづくりや福祉など目的に密接に関わらなくては。自治体、交通事業者、福祉、高齢者関係も参加したコンソーシアムを作りたい」(佐治氏)と発言。鎌田教援は「新しい時代に向けた交通と福祉の連携、自動運転やICTの活用も含めた革新的な取り組みが進んでいけば」と結んだ。」


今後の取り組み等の討議:

(1)インストラクター&運行管理者研修会』の開催
 ■日時:
2018年1月30日(火)10:00~16:00
 ■会場:たかつガーデン・すずらんの間(近鉄「上本町駅」、地下鉄「谷町
9丁目駅」下車)
 ■主催:特定非営利活動法人 日常生活支援ネットワーク  ■共催:関西
STS連絡会


211月度~の「運転者認定講習会」の開催
 ◎ 11月12日/移動ネットみやぎ「2017福祉送迎講習会」(於:石巻専修大学)
 ◎
1113、14日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎ 1211、12日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
12月17日/大阪市生野区「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
1月
22、23日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
2月12、13日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎ 312、13日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)

■次回運営委員会:12月2日(土)pm6:00~8:00
於:NPO法人 日常生活支援ネットワーク事務所