167回運営委員会
3月2日に「関西STS連絡会」第167回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:8団体)
NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) 伊良原淳也(関西STS連絡会)
NPO法人「自立生活センターやお」(八尾市) NPO法人「自立生活センターFREE」(吹田市)
NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市) NPO法人「いばらき自立支援センター ぽぽんがぽん」(茨木市)
住谷章(なにわ子ども育成会) い~そらネットワーク(大阪市)


【議 案】

■ 資料関係:

①「《茨木市議会》丘陵部や山間部の移動支援対策は」(茨木市議会・一般会計予算定例会~議案質疑 2019.3.12より
▲丘陵部のバス停(山手台6丁目)
丘陵部や山間部の移動支援対策は/公明党・篠原 一代
【問】
丘陵部や山間部の公共交通については、バス停までの移動が困難な高齢者が増加していることや、バス路線の維持が困難になっているという課題があるが、これらの課題への対策は。また、今後、茨木市総合交通戦略における、山間部で展開していく事業のイメージはどのようなものか。
【答】丘陵部については、全国で研究が進められている自動運転の活用などの状況を注視しながら、地域住民との意見交換を進める。山間部については、地域住民との話し合いを行い、実情に合った交通手段の検討を進める。また、本支援は、市が車両を用意し、事業者等の運行管理のもと、地域の方が利用する形態をイメージし2019年度に地域住民と協議し2020年に社会実験を行い、その後、本格導入を協議、検討していく。」


②「障害があるから特別扱いしてほしいわけではない」(『広報いばらき』2019年5月号より)
障害があるから特別扱いしてほしいわけではない/茨木障害フォーラム事務局長・六條 友聡さん
 私は、身体の筋肉が萎縮し筋力が低下する先天性ミオパチーという病気で、電動車いすに乗って生活しています。普段は、障害のある人の社会参加の促進、啓発等の活動を行っていて、「障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」の制定にも携わらせていただきました。制定以前から私は、セミナーを開催して条例の必要性を訴え、市にも希望を伝えてきました。障害者施策推進分科会にも参画し、専門部会や障害者団体へのヒアリングを行うなど、深く関わったこともあり、条例が制定されたときは本当にうれしかったです。
 条例は、私たち当事者の想いがしっかりと反映されているものになっていると思います。中でも民間事業者の合理的配慮の提供を義務化としたことは画期的だと思います。これまではバリアフリーが進んでおらず、入りにくいお店はあきらめていましたが、配慮していただけるお店が増えれば、色々な所へ行けるという楽しみもきっと増えます。単に「やりなさい」というだけでなく、助成金も併せて設けたことは、民間事業者の理解も得やすく、バリアフリーなどに取り掛かりやすいのではないでしょうか。
 私たち当事者は、障害があるから特別扱いをしてほしいわけではありません。障害のある人もない人もみんな一緒に気持ちよく暮らせるようになることを願っているのです。条例施行から1年が経ちましたが、条例を知らない市民の方も多く、今はまだ根付かせていく段階です。私も啓発活動等をもっと進めて「共に生きるまち茨木」の推進に努めていきたいです。」


③「総合事業における訪問型サービスD(移動支援)の実施市町村状況」(厚労省統計)

 訪問型サービスD(移動支援)の実施市町村状況:

2017年3 37市町村 今後創設・増設の移行」:7.6%、「検討中」:17.6
2018年3 40市町村


④「《自家用有償運送にタクシー参画》運行管理面など未来投資会議が新方針」(東京交通新聞 2019.3.11
「 政府の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)は3月7日、地域の移動手段を確保する一策として、タクシーなど交通事業者が白ナンバーの自家用有償旅客運送に参画するという新方針を打ち出した。タクシー事業者が市町村からの委託を受け、運行管理面などで協力する。「自治体は交通事業者のノウハウの活用で負担軽減となり、利用者は安全・安心な交通サービスが受けられ、双方にメリットがある」とした。
 「交通事業者が有償運送の実施主体に参画する場合の法制を整備すべき」とし、必要に応じ、道路運送法改正案の来年の通常国会への提出を検討するよう掲げた。今夏に閣議決定する予定の「成長戦略実行計画」に盛り込むことを目指す。
 三ヶ森タクシー(北九州市、貞包健一社長)が2017に、規制改革推進会議(議長=大田弘子・政策研究大学院大学教授)に提案した「コストカットした別モードのタクシー」と類似の内容。タクシー会社が自家用車ドライバーの運行を管理する仕組みで、今回の動きに影響を与えたとの見方も出ている。
 同会議は有償運送関係では、また、交通空白地を明確化するガイドラインの作成「地域公共交通網形成計画」に有償運送の導入を位置づけた場合の手続きの簡素化、▽国家戦略特区で認められている観光客送迎の明確化――をうたった。
 「相乗りタクシー」制度の創設について、国土交通省が実証実験し、導入の方針を出している中、未来投資会議も重視。「地域や要件の限定はかけずに、一般的に導人する。通達を整備する」とした。


⑤「《2019.3.9 移動送迎支援活動セミナー》まとめにかえて/三星昭宏(近畿大学名誉教授)」(『モヴェーレ30号』より転載)
「 セミナーでは、大塚氏(国土交通省近畿運輸局)のかなり突っ込んだ「諸法令のボイント」や、大阪府(3地域)、滋賀県、兵庫県の現場からの活きいきとした実践報告があった。本稿では「セミナーのまとめにかえて」、国土交通省の今回の「中間とりまとめ(2017年」検討会委員に加わった者としての政策に対する評価と課題を述べてみたい。

このセミナーの大切な論点は何か
 地域の移動問題に関する国土交通省の姿勢には、変化がみられる。これまで以下のような問題が続いていた。
① 道路運送法の需給調整は多少緩和されたが公共交通衰退を食い止めることができず、自動車のない高齢者・障害者・子供などの地域生活阻害が進んでいる。
② 高齢者等の交通事故防止策としての「運転免許返納」が急がれているが、代替となる交通手段がない。2018年の国土交通省の施策検討は、その状況をふまえたものである。
③ 福祉施策と交通施策は、「たて割り」により連携がなされていなかった。
④ 有償・無償の取り組みへの規制が、「厳しすぎるのではないか」というボランティア現場の声が強く、助け合い交通発展の妨げになっているとされてきた。
2018年の国土交通省の施策検討結果は、これらを強く意識したものである。道路運送法の基本的枠組みは変えない中で、地域の「助け合い」、地域「資産」活用と、その弾力的運用を目指し、有償・無償の「助け合い」交通を重視している。以下原文を抜粋する。
※「自家用有償運送の活用:公共交通で対応できない場合には、高齢者の移動手段として、自家用有償運送の活用を推進してゆく必要がある。」
※「許可・登録を要しない輸送(「互助」による輸送)の明確化: 高齢者の移動ニーズに対応するためには、地域における助け合いも今後重要性が増すものと考えられる。介護・福祉分野においても、こうした活動に一定の役割が期待されている。……適材適所の移動手段の導入に資するよう、営利を目的としない「互助」という観点から、許可・登録を要しない輸送についてその考え方の明確化を図る必要がある。」

 このように国土交通省は今回の文書で、福祉有償運送、無償運送に対し、これまでの姿勢から一歩踏み出し、「活用推進、役割期待」を明確にした点が画期的であるといえよう。一方、有償・無償ともに基本的な枠組みは従来と同じであり、抜本的な対策ではない。今回の文書は、許認可条件の緩和というよりは、施策を促進し、より現実的に運用を行うことに意味があると思われ、福祉有償運送運営協議会や公共交通会議の場で、議論に活用することが重要と思われる。
 セミナーでの各地の報告も、これまでにない新しい活気がみられた。高齢者福祉の総合事業Dと輸送の結合について、昨年(2018年)はそのコンセプトと取り組みの入り口の議論が行われたが、今年(2019年)はより具体化した取り組みの報告が増えた。今回の事例報告は、取り組みが役所主導でなく、住民参加により下からの積み上げで行なわれているのが注目された。その中で社会福祉協議会が中核的役割を果たしていることも目をひいた。これらは従来の福祉有償運送活動に加えて新しいタイプの運動を示すものとして、期待を大きく持っている。
 最後に茨木の六條氏から、運営協議会に関する取り組みが紹介され演者の熱意が伝わった。今回の政府の新しい促進方針であらためて運営協議会の議論内容を見直したいものである。


⑥「《2019.3.9移動送迎支援活動セミナー》足元の生活の場で“地域の人”“福祉”“交通”の連携が始まろうとしている!! /柿久保浩次(関西STS連絡会)」(『モヴェーレ30号』より転載)
道路運送法での“自家用有償運送”“登録を要しない輸送”の現状について。
 改正道路運送法(2006年)から13年。全国統計(国交省)では、自家用有償運送は「登録団体数」(2006年2,138団体→2018年3,134団体と996団体増)、「車両数」(2006年7,795台→2018年18,968台と11,173台増)の増加を示しています。しかし2017年度の福祉有償運送「登録件数」が「新規:112団体」に対して、「抹消(撤収・解散):113団体」という現状があります。
 また大阪府の現状を見ると、「移動制約者数」(2006年773,019人→2018年1,126,153人と35.3万人増)に比べて、「登録団体数」(2006年158団体→2018年146団体と12団体減)となっており、2017年度の福祉有償運送「登録件数」は「新規:9」に対して「抹消:15団体」という、目を覆う状況があります。
 これらは自家用有償運送が一定程度普及してきたが、限界に達してきていること。そして“登録を要しない輸送”“訪問型サービスD送迎”への模索がはじまっていることを示しています。各自治体で開催されている“福祉有償運送運営協議会”でも、旧態依然とした上滑りな協議から脱出して、足元の生活の場における“移動送迎手段の確保”に向けて“地域の人”“福祉”“交通”の連携が進むようにお願いしたいものです。

国土交通省の「中間とりまとめ(2017年)」以降の動きについて。
 2018年11月に、国土交通省自動車局が、近畿で自家用有償運送や互助による輸送に携わっている団体向けの「自家用有償運送及び道路運送法の登録を要しない輸送等に係る説明会」(於:大阪合同庁舎)を開催しました。続いて12月には、NPO法人 移動送迎支援活動情報センター、関西STS連絡会が共催する移動送迎支援活動セミナーに、国土交通省近畿運輸局大阪運輸支局から「自家用有償運送等の諸法令のポイント」という内容で、講師を派遣していただきました。そして今回の2019年3月移動送迎支援活動セミナーにも、同主旨で国土交通省近畿運輸局自動車交通部から講師の派遣がなされたのです。
 これらは国土交通省が「地域住民の輸送の確保が喫緊の社会的課題」として自家用有償運送を“登録制度”とした道路運送法の改正(2006年)から、国交省「高齢者の移動手段の確保に関する検討会“中間とりまとめ”」(2017年)を取りまく状況の切実さが、各項目(6項目)ごとに末尾には【○○年○月までに実施】【○○年度中実施】【速やかに周知】と明記されていることからも伝わってきます。遠藤氏の「法的な変動期にきている」や、三星さんの「国交省の大転換」と言われる所以なのかなと思います。

関西全域から関西STS連絡会に入ってくる“問合せ内容”の最近の特徴は。
 今も、福祉有償運送を担っている団体からの各運営協議会での「ローカルルール」への問合せが後を絶ちません。でもこの頃は、積極的で前向きな相談・問合せも、非常に増えてきています。
 以前は3ヵ月に1件ぐらいだった行政、社会福祉協議会、地域自治会などからの「“移動・外出支援”を取り組みたいが…」という相談が、月に3~4件も入るようになってきました。地域住民主導での“助け合い送迎”を取り組むための「お出かけサポート出張講座」や「ボランティア送迎セミナー」「ボランティア送迎運転研修」などがそれです。地域の10人~30人の集まりにこちらから出向き、送迎活動の勉強会をしているのです。
 話の内容は、今の地域の状況には何が必要で、何が問題なのか。参加者の思っていることや意見を聞きながら、どうしたら移動に困っている人の送迎活動ができるのか、道路運送法や制度、福祉との連携などを学習しながら、必要に駆られて必死でボランティア送迎を立ち上げようとされているのです。
 関西には198市町村あるのですが、相談があったり独自で動き始めているところは20~30市町村を数えるようになっています。特に社会福祉協議会と地域自治会の動きが活発になってきているように感じます。四国や北陸からも数件の相談があり、「ボランティア送迎セミナー」を開催したり、運転協力者の確保に向けた「ボランティア送迎運転研修」を実施して、すでに受講者の合計も50人は超えています。

“福祉”と“交通”との連携は、うまく進んでいるのでしょうか。
 言うまでもなく地域の生活の場で“移動・外出手段を確保”していくためには、国交省、厚労省、自治体、社会福祉団体、そして私たちの福祉有償運送、互助による輸送などを担うNPOなどの市民団体、ときには地域自治会が、うまく連携していかなければなりません。
 取り組みがうまくいってるなぁと感じるところの特徴は、買い物や病院への移動で困っている人を、自分たちの“助け合い送迎”で取り組むことができているところです。3~4人でも動ける人で始めようとしているところでは、社会福祉協議会も動く、行政もどうしたら制度の活用ができるのか動くようになってきています。
 例えば大阪市生野区では、2014年から「福祉有償運送セミナー」「福祉有償運送運転者育成講習会」を行政が主導してスタートされ、「福祉有償運送事業者連絡会」(2016年~)、「福祉有償運送調整会議」(2018年)では区役所、社会福祉協議会、地域包括支援センター、福祉有償運送事業者と利用者とのマッチング会議も持たれています。大阪府太子町でも、同様の流れを創り出してこられました。
 まさに「2019移動送迎支援活動セミナーin関西」で“地域からの報告”をしてくださった「許可・登録を要しない移動支援+訪問型サービスD(生活支援一体型)」(大阪府太子町、兵庫県小野市)、「住民主体の移動支援」(滋賀県高島市、大阪市生野区)、「自家用有償運送」(大阪府茨木市)などの実践例そのものが、“地域の人”“福祉”“交通”との連携の現状況ではないでしょうか。
 それぞれの地域で、地域の特性に合った取り組みとして悪戦苦闘されている現状があります。しかしながら今、“地域のニーズに合わせた移動・外出支援”が、確実に広がりを見せ始めていると実感するのです。切実な“移動・外出手段の確保”の問題は、地域の人と福祉行政と交通行政とが協力していかなければ、うまくいかないように思います。地域の各団体がネットワークを組み、みんなで知恵を出し合って、一歩ずつ前に進んでいきたいものです。」


今後の取り組み等の討議:

(1)6月度~「運転者認定講習会」等の開催

 ◎
5月19、20日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:滋賀県日野町)
 ◎
6月1、2日/関西STS連絡会「運転協力者現任研修」(於:和歌山県橋本市)
 ◎
6月17、18日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
6月20日/関西STS連絡会「ボランティア送迎講習会」(於:京都府亀岡市)
 ◎
6月26日/関西STS連絡会「ボランティア送迎講習会」(於:奈良県宇陀市)
 ◎
6月27日/㈱ふるさと「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
7月22、23日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
7月25日/㈱ふるさと「運転者認定講習会」(於:名古屋市)
 ◎
8月20、21日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:鹿児島県鹿屋市)
 ◎
9月26、27日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:滋賀県米原市)


■次回運営委員会:2019年6月1日(土)pm6:00~8:00
於:NPO法人 日常生活支援ネットワーク事務所