《2005年度・報道資料ファイル》 『=国交省小委・大筋で合意=道運法改正で対応/セダン特区全国展開、福祉有償に登録制』(東京交通新聞2005.12.12) 国土交通省は6日、NPO等によるボランティア有償運送検討小委員会(自交局長の懇談会、委員長=山内弘隆・一橋大大学院商学研究科長)を同省で開催、検討報告書の素案に大筋合意した。同案は、@道路運送法を改正し福祉有償運送を新たに規定する、A運営協議会の役割の明確化、B80条許可に替わり登録制度(更新制)を導入する、Cセダン特区を全国展開し、運転協力者に一定の資格・経験を求める、D運送の対価は書面交付とし、法外に高額な対価には変更命令を発動する、E事後チェック制度を導入、F改正法施行は来年10月がメド――など。運用面で意見が出たが、取り扱いを委員長一任とし、小委は実質的な論議を終了した。国交省は道運法改正法案を年明けの次期通常国会に提出する。 素案によると、新たな仕組みの方向性の主要ポイントとして、@法的位置付けの明確化、A運営協議会の役割、B登録制度の導入、Cセダン特区の全国展開、D輸送対象者と利用者ニーズへの対応、E輸送の安全・旅客の利便確保の明確化・拡充、F運送対価の書面交付、Gタク類似行為の防止措置、H地方自治体の役割、I事後チェック制度導入――をあげている。 運営協議会が申請を協議・審査する現行スキームは踏襲。80条許可に替わり登録を審査することになる。運営協は入り口の審査以外に登録後のフォローアップの役割も期待されているとしている。登録制移行の理由として「有償運送はタクシーより自家輸送に近い性質を有し、タクシーの許可制より行政の関与の度合いの少ない登録制が法制上適切」としている。 セダン特区の全国化では「セダン車両の使用について、人的な介助または見守りが必要なものは有償運送として取り扱い全国展開を図る」とした上で、「ただ利用者保護の観点から運転協力者に介助の技能等一定の資格・経験を求める」と、ヘルパー資格やケア輸送士サービス従事者研修修了(全乗連、全福協など主催)などドライバーに条件を課すとしている。 経過措置として、改正法案が成立した場合、既に80条許可団体は新法による登録を受けたものとみなす。登録更新時に新たな要件をクリアしている必要がある。来年3月末までは現行ガイドライン(国交省240号通達)により運営協の設置と80条取得が急がれるが、同4月1日以降の対応は国交省によると「その段階の取得状況を踏まえ検討する」としている。 検討報告書案ではこのほか、有償運送の対象者について「人的な介助または見守りなしに単独ではタクシー等公共交通機関を利用できない人」と定義している。 輸送の安全確保では、運転者の要件、運行管理・整備管理の体制、事故・苦情体制、損害賠償保険など義務化。運転者や運行管理者が受ける講習のレベルについて、具体的な資格・講習内容、講習実施主体などを検討する。運行管理責任者には国家資格までは求めないが、事業用自動車の運行管理に関し1年以上の実務経験、自動車事故対策機構による運行管理に関する基礎講習、道路交通法に基づく安全運転管理者要件などを例示し、求めている。 運送の対価では、国の許認可や届け出を必要としないが、利用者利便のため、入会時に利用者に対価を明示した書面を交付するなど、十分な説明が必要としている。白タク防止では、セダンを対象とする中で措置の拡充が必要とし、運転者証の車内掲示、登録証の写しの携行・表示などを求めている。 事後チェックでは、悪質な団体を排除するため、登録更新時に定期チェックするほか、必要に応じ監査を実施、違反があれば行政処分・是正命令をする。チェックができるよう事故・苦情・運転記録、会員名簿、運転者名簿、点呼記録、車両台帳などの保存も、うたっている。 訪問介護事業所のヘルパー持ち込み車両の取り扱いについても言及。従来通り80条許可の対象とするが、ヘルパー車両も含む台数に応じた運行管理者を選任し、営業所ごとに適切な運行管理を実施するとしている。運用面は法案成立後の通達等で規定していく。 《合意したけれど楽観はできない》杉本依子・全国移動ネット理事長 小委で合意したからと言って楽観はできない。法制化の条文を検証したいし、運用を規定する通達を念頭に私たちNPOボランティア団体の意向をまとめ、国土交通省に具申していかないといけない。セダン型車両の全国化は評価するが、運転協力者に資格付与を課すことなどは、善意で行う協力者の広がりを委縮させる。一方で来年4月から法制化までの間が不安だ。宮城県のように地元警察が白タクの摘発に乗り出さない保障はない。自治体の理解がなく運営協議会のない地域では、外出のニーズがあるにもかかわらずNPOにあきらめムードが出始めている。結果的に地元の移動困難者が外出できないことにつながる。そうした事態を一番恐れる。 『=全国NPOへ200団体結集=全国移動ネット総会/運転者研修など柱に』(東京交通新聞2005.12.5) 各地で移動サービスを提供するNPOなどが集まる移動サービス市民活動全国ネットワーク(=全国移動ネット、約200団体・個人)は11月27日、都内世田谷区ボランティアセンターで特定非営利活動法人・全国移動サービスネットワークの設立総会を開催。任意団体からNPOへ組織強化した。運転者・運行管理者研修会の開催などを柱とする初年度と翌年度の事業計画を決めた。東京都に認証申請後、来年3月の認証を目指す。 役員に理事・幹事28人を選任。理事長に杉本依子・ハンディキャブゆずり葉理事長(東京都多摩市)、副理事長に中根裕(移動支援ネットワークちば)、河崎民子(かながわ福祉移動サービスネットワーク)、柿久保浩次(自立支援センターOSAKA)の3氏を選んだ。杉本理事長は就任あいさつで「若い方も活躍できるように環境を作っていきたい」と抱負を述べた。 設立趣意書を承認、「移動の権利が移動制約の有無にかかわらず平等に保障されるための交通システムのあり方を、各地の移動サービス団体による実践の中から提言する」としている。 同団体には一般タクシー事業者や福祉限定事業者も参加。NPO系ネットワーク組織はほかに、移動・移送サービス地域ネットワーク団体連合会(笹沼和利代表世話人)と市民福祉団体全国協議会(米山孝平代表理事)があり、市民協はNPO組織。一般タクシー事業者中心に集まるNPO全国介護移送協会(会長=黒田司郎・堺相互タク社長)もある。 総会後、記念講演が行われ、交通エコロジー・モビリティ財団の沢田大輔氏が「これからの移動と交通を考える」を、世田谷区保健福祉部保健福祉活動推進課の中川真理氏がサンフランシスコの福祉輸送の視察結果を報告した。 『=福祉有償=セダン特区52地域認定』(東京交通新聞2005.11.28) 内閣府は22日、地方自治体から受け付けた構造改革特区・地域再生計画申請を一括認定した。「福祉有償運送セダン型車特区」は、政令指定市の仙台、千葉、北九州3市のほか、“全県特区”の埼玉、静岡、三重3県を含む計52地域が申請通り認められた。これでセダン特区は全国で23地域から75地域に増加。有償運送の道路運送法許可取得猶予が来年3月末に迫る一方、今年中にセダン特区全国化の結論が出されるため、1月に予定する次回申請受け付けでは今回のような大量申請となるか現時点で不透明だ。 既存の特区・再生計画制度に対する9月申請受け付け分(26日〜10月5日)。特区は9回目で、今回認定された全特区105件のうちセダン特区が半数を占めた。東京都内の同特区は品川、豊島の2特別区と町田、日野の2市。北海道と長野の市町村が目立つなど地域的な偏りがみられる。 無人で車両を貸し出せる「レンタカー型カーシェアリング特区」には神奈川県が認定を受けた。広島県、北九州市、札幌市、愛知県、福岡市に次いで6例目となった。次回申請受け付け分は3月中に認定の見込み。 三重、静岡がセダン特区/管内3県で全県対象に 三重、静岡両県は22日、内閣府から「県福祉有償運送セダン型車両特区」の認定を受けた。三重の場合、今回の対象エリアは昨年11月に認定を受け先行している旧飯高町(合併で松坂市に編入)を除く全県としている。 これで両県は全県がセダン特区となった。全県特区は管内5県のうち先行の愛知を含め3県となった。 三重県は福祉有償運送運営協議会の開催について県民局を中心に県内8地区ごとに設置しつつある。福祉有償運送等運営協議会事務局連絡会議をあわせて設置し連携していく方針。 同県は福祉有償運送について「既存公共交通機関の補完、移動制約者の移動手段の確保」と位置づけている。「既存公共交通機関」とはバス・タクシーで、同県は既存のバス・タクシーの維持、確保を前提とし、その補完としての福祉有償運送の考え方を明示している。 管内では、岐阜県多治見市が単独で認定を受けた。 『=特区提案=地域通貨で運送対価決済 有償運送の緩和相次ぐ』(東京交通新聞2005.11.28) 内閣官房は22日、地方自治体や民間企業などから募集した構造改革特区構想をまとめた。バス、タクシーなど旅客運送分野では、地域通貨決済に限定した自家用車有償運送サービス(やまなし産業情報交流ネットワーク=山梨)や子ども移送(福井県)、過疎地観光客輸送(徳島県上勝町)など、有償運送制度の緩和・適用拡大を求める提案が相次いだ。今後、内閣官房と国土交通省など関係省庁が折衝に入り、来年2月をメドに採否が決定する運び。 特区制度への提案受け付けは今回で8回目。16日までの1ヵ月間募り、157件(自治体73、民間など84)のアイデアが出された。地域福祉やまちづくりなど住民生活関連が多かった。採用分は制度化され、自治体が特区認定を受けることで構想が実現できる。 地域通貨有償運送の提案では、山梨県内の産学官有志でつくる「やまなし産業情報交流ネットワーク」(会長=岡田勝蔵・山梨大学工学部教授)が上野原市で流通する「ウエノハラ・エコノ・エコロ・マネー」(UEM)の導入を企画。NPO(民間非営利団体)がUEMを運営、自家用車で市民の輸送を担い、UEMで決済する仕組みとする。 運送の条件として、@運転者=地域の道路事情に精通し、十分な経験、A利用者=事前予約、B対価=割り勘ベースのガソリン代など実費に10%相当額上乗せ――などと掲げ、これを満たせば道路運送法上の許可は不要とする。県商工労働部は「地域通貨は甲府市などですでに登場している。輸送サービスとドッキングした試み」と説明している。 福井県は前回の提案に続き子育て支援のための児童有償運送を、「NPO静岡県ボランティア協会」は定員30人以上の大型リフトバスによる福祉有償運送を提起。群馬県内の19移送団体は無償輸送の“範囲”の拡大を共同で要望。ガソリン代などを含む1時間当たり利用者負担額が最低賃金以下の場合、謝礼(スタイペンド)として扱い、県の認定があれば道運法許可を除外できるとの考え方を示した。 このほか、経済産業省所管の「21世紀ニュービジネス協議会」(長野)などが今回も、タクシー最低車両数の緩和(営業所設置要件1台以上)を要望。現行は原則5台以上(離島1台、内陸過疎地2台)。過疎地有償運送全国第1号の徳島県上勝町は、送迎対象を住民以外に観光客にも広げたいとした。
『=枚方福祉移送=共同配車、月間400回に ボランティア比重高まる』(東京交通新聞2005.11.28) 枚方市は福祉移送サービス「共同配車センター事業」の1年間(2004年11月〜05年10月)の利用実績をまとめた。福祉タクシー、有償運送80条許可事業者、NPO等ボランティアの3者がコラボレート(協働)して移動制約者の配車業務を担う全国初の試みだが、今年4月以降は月間平均400回の配車回数を記録、移送ボランティアが担う比率が上昇してきている。同市は21日、10回目の福祉移送運営協議会を開き、移送サービスの今後の課題について協議した。 共同配車センター事業は昨年11月から社会福祉法人「であい共生舎」に業務委託しスタート。1年間の配車実績は3038回で月間平均253・2回の利用があった。今年4月以降は「市幼児療育園への送迎輸送」という安定した仕事を受託したため、月間平均で約400回の利用回数を記録している。 10月末現在の利用登録者は253人。輸送を担うのは福祉タクシー事業者が8社、有償運送事業者が7社、移送ボランティアが30人。療育園送迎については福祉タクとボランティアが行っている。全般的に移送ボランティアの比率が高まってきている状況だ。10月分の配車実績431回のうち療育園送迎207回を除く224回についてみると、有償運送48回、福祉タク53回に対し、移送ボランティアは123回となっている。 配車業務は、障害者雇用で採用された山形一人さん(34)が平日午前9時〜午後4時15分まで、以降午後5時半まで共生舎職員の大橋友子さんが担当する。山形さんは「療育園送迎の仕事が入ってから忙しくなった。利用者からは運賃の安い所をお願いしたいという要望が多い」と話している。こうした発言からも次第に移送ボランティアに委ねる形が増えていきそうだ。 市福祉移送サービス運営協議会は、ボランティアの持ち込み車両(セダン車両も可能)に関して「共同配車センター」で一元管理する形を採っている。同協議会は移送ボランティア志望者を対象とする「運転者研修」をこれまで6回実施、100人以上が受講し約20人が登録している。 『心のバリアフリー重要/関西STS連絡会・セミナーを開催』(東京交通新聞2005.11.14) 関西STS連絡会(上田隆志代表)は6日、大阪市西成区の市社会福祉研修情報センターで「今後の地域移動送迎サービス」に関するセミナーを開催した。 近畿運輸局の松葉圭一交通環境部消費者行政課長が「近畿の交通バリアフリー」、大阪大学大学院の新田保次工学研究科教授が「福祉有償運送の発展をめざして」、近畿大学の三星昭宏理工学部社会環境工学科教授が「福祉交通サービスの新時代」と題して、それぞれ講演した。 このうち松葉課長は、バリアフリー施策の課題と題して、@移動円滑化達成駅の増加、A交通バリアフリー基本構想策定自治体の増加、B心のバリアフリーの浸透方策――などを挙げた。 関西のSTS(スペシャル・トランスポート・サービス)の現状について、神戸市、枚方市、三重県伊賀市のNPO、社会福祉協議会から報告が行われた。 枚方については、NPOパーソナルサポートの長尾祥司理事長が福祉移送サービスと共同配車の現状について述べた。 『「バリアフリー新法」素案/タクシー・STS明記で調整』(東京交通新聞2005.11.14) 交通バリアフリー法(公共交通・駅施設対象、2000年制定)とハートビル法(建築物対象、1994年制定)を統合した「バリアフリー新法」が来年2月の通常国会に提出される見通しだ。 現行のバリアフリー法では、自動車旅客運送は乗合バスのみが位置づけられているが、国土交通省は「ユニバーサルデザイン(UD)政策大綱」を基に、タクシーやSTS(スペシャル・トランスポート・サービス=個別輸送体系)の法定の検討を最終調整している。 新法の素案では、法の名称は「高齢者、障害者等の円滑な移動等の環境の整備の促進に関する法律」。利用者の定義に精神障害者を加え、バリアフリー化の範囲を駅周辺から旅客関連施設周辺へと拡大。自治体の基本構想作成にあたり、住民やNPO(民間非営利団体)などが提案できる仕組みを設け、その一環として協議会制度を創設、公安委員会などが参画できるようにする考えだ。 国土交通省UD大綱は、身体障害の有無、年齢、性別、言語などの区別がない公共交通・都市基礎づくりの指針。バリアフリー政策の対象に、福祉タクシー・乗合タクシーサービスや学校など交通機関・公共空間の拡充をうたい、駅前など「交通結節点」の乗り継ぎ円滑化も明記。バリアフリー新法とともに「公共交通機関の利用の円滑化の促進に関する法律」の制定が検討されている。 福祉有償運送の位置づけに関しては、道路運送法の改正がからみ、各法との仕分けが焦点の一つとなっている。 『《ラウンドテーブル》おたがい様を大切に/関西STS連絡会事務局長 柿久保浩次』(東京交通新聞2005.11.7) 国土交通省が「福祉有償運送検討小委員会」を設置、各界各層の委員による検討が始まっている。自動車交通局長が冒頭、「安全・安心・安定的に社会のニーズにこたえる仕組みを年末まで目いっぱい議論し、結果によって法整備も考えたい」(本紙9月26日)と提起したという。 80条ガイドラインによる運営協議会も関西各自治体で温度差こそあれ、少しずつ動きだしているが、私たちも「例外規定の80条の枠だけでいいのか」と切実に感じている。 私たちが接している移動を制約されている利用者の、期待と不安が入り交じっている現状だ。 関西の先進都市・枚方市でも「多くの潜在利用者が外出制限を余儀なくされている」実態や、練馬区調査の「外出をあきらめたことのある」利用者の多さをみるとき、胸が痛む。 私はひょんなことから、介護タクシーを始めるタクシー事業者さんのケアドライバー研修や、介護保険事業者さんの運転研修に声がかかることがある。どの運転スタッフも真剣な眼差しだ。 先日、私たちが開いた一泊インストラクター養成研修の場に、三重県伊賀市からグループ「おたがい様」という団体の女性スタッフが参加されていた。 私は四国出身で大阪に来て久しいが、「桃栗3年、柿8年」という言葉をずっと大事にしてきた。 でも、今の運営協議会や検討小委員会の動きや、地域の福祉輸送の現状を見るとき、きっと、みんなが「おたがい様」の気持ちを大切に、みんなで一歩ずつ前に進むべき時かなぁと、ふと思うのは私だけでしょうか。 『23団体291台を許可/神奈川県の福祉有償運送/10月末現在』(東京交通新聞2005.11.7) 神奈川運輸支局管内の道運法80条に基づく自家用自動車による福祉有償運送許可者は10月末現在で23団体291台(うち軽自動車55台)に達した。 使用車両の内訳をみると、セダン型一般車両が204台(うち軽自動車30台)で全体の7割を占めている。 福祉車両は車いす専用54台(うち軽自動車16台)、兼用2台、回転シートなど31台(うち軽自動車9台)となっている。 県内9地区の福祉有償運送運営協議会が設置されており、許可者もほぼ全地区で出ている。 『過疎地有償運送にノー/NPOの要望に対し飯能市』(東京交通新聞2005.11.7) 埼玉県飯能市でNPO法人が過疎地型で有償運送を申請したいとの意向が示されていたが、同市は「既存タクシー会社がすでにあり、道運法80条許可申請に該当しない」との見解から、地元タクシー、バス事業者から参考意見を聴取した結果、最終的に「同市は過疎地に相当しない」との判断を下した。 同NPO法人は今後、福祉型で運営協議会の設置を要望していくことになりそうだ。埼玉の県北地域では、過疎地型有償運送を行いたいとの意向を示す他のNPO団体も控えているが、今回の飯能市の判断はこうした動向に少なからず影響を与えそうだ。 飯能市の地元NPO法人「ぬくもり福祉会たんぽぽ」(桑山会長)は過疎地型有償運送を申請したいと先月に入って市に相談した。市側は道運法80条許可を受ける場合の交通過疎地に該当しない可能性が高いと判断。先月24日に運営協議会を設置するかどうか事前調整会議を開き、タク業界からも意見を聞いた。 出席した地元5社は過疎地有償運送は認められないと反対を表明。理由として、人口8万4000人でタク5社が市内全域で営業し、地元住民の足を確保していることを挙げ、過疎地有償運送の条件を満たさないと主張した。 市はこれらの意見を踏まえ、最終的に「過疎地型での有償運送は認められない」との判断を下した。 同NPO法人は利用会員約360人で10年前から隣接する旧名栗村(今年1月飯能市に合併)でも移送サービスを実施している。今後、仮に福祉有償運送に移行した場合、利用者が限定されることになる。 関東管内の過疎地有償運送は、04年10月に茨城県の旧里美村(現在は常陸太田市に合併)で許可されたのみ。同村は既存タク会社がない交通空白地域。 『=大阪府・ブロック運営協議会= 府内11団体の申請承認』(東京交通新聞2005.10.17) 府内の5ブロックで7月に「運営協議会」を開催し、道路運送法80条許可を申請する事業者の審査を開始。大阪市3、北摂3、河北3、中部2、泉州1の12団体について審査を行い、11団体について申請を承認している。実際には申請書類の作成等に時間がかかっており、未申請事業者が多くいる。 大阪運輸支局はこのほど、道連法80条に基づく福祉有償運送許可事業者数をまとめた。特区から事業継続する枚方市で8月に2事業者を許可し19事業者となったほか、新たに運営協議会を設置した5ブロックのうち北摂で2、河北で2、泉州で1の計5事業者にとどまっている。大阪市と中部ブロックではまだ申請が出ていない状況。 最近の許可事業者は次の通り。 【枚方市】社会福祉法人福友会2台、NPOホームベース2台【河北】大東四条畷保健生活協同組合2台、自立生活センターいしずえ1台【泉州】医療法人医進会1台【北摂】NPOのせ田里伊能2台、NPO高槻ライフケア協会5台 『=練馬区調査=外出あきらめた利用者が過半数』(東京交通新聞2005.10.10) 外出をあきらめた“ギブアップ需要”が過半数に――練馬区が5日公表したタクシー券利用者アンケート結果によると、外出したいにもかかわらず外出をあきらめた利用者が「よくある」17%、「時々ある」38%と計55%も占めることが分かった。理由は「介助者がいない」が最も多く31%、次いで「交通費が高い」19%など。 調査は繰馬区タク券利用者(身障1〜3級、愛の手帳1・2度)の、うち3月から6月に同券を収受しに来庁した約3000人。有効回答は1509件。 利用するタクシーのタイプは普通車が88%と最多。外出先は通院51%、通院とそれ以外が半々31%など。タクシー利用で困ることは「タクシーがつかまらない。予約がとれない」39%、「運転者により対応が異なり不安」34%、「利用料が高い」22%など。 タクシー以外の送迎サービスを利用する理由は「決まった時間に利用できる」が最も多く、次いで「利用料が安い」「知っている人に運転してもらえ安心」「タクシーとそれ以外の送迎サービスを使い分けている」などが多い。 『《交通論壇》福祉移送サービス運営協議会/自治体の役割大きく 近畿大学教授 三星 昭宏』 (東京交通新聞2005.8.8)
【《世田谷区》タクにも協力求める/移動困難者ニーズ充足へ】(東京交通新聞2005.8.1) 東京都世田谷区はタクシーとNPOが協力した福祉配車センターの検討を始めた。区内3万人にのぼる移動困難者のニーズに十分こたえきれていないと判断、検討会を発足させ配車の仕組み作りに向けた調査に入った。2006年度と2007年度の2ヵ年計画で実証実験した上で実用化を目指す。自治体主導の配車センターは札幌市と枚方市で具体化しており、東京では初めてとなる。 世田谷区によると、区内には身障者手帳と愛の手帳所持者が約20000人、要介護認定者が約2万5000人おり、移動困難者は30000人程度(人口比率3・7%)と推計している。これに対し、リフト付タクシー登録者は約1400人、福祉タクシー券交付人数は約8000人、NPO等の移送サービス利用登録者数は約1100人と、約10000人強にとどまっている。 先の区議会で市民団体関係議員から問題提起があり、区側は前向きな対応を答弁し、今回の配車センター検討につながった。区では保健福祉部と在宅サービス部などが中心になり、配車の仕組み作りのための検討会を設置、青写真作りを始めた。配車センターの具体的な内容は今後、タクシー会社やNPOなどにヒアリングし固める。 センターの役割として、@申し込み先の一元化、A各NPO等が持っている個々の利用者情報、配車マネジメント情報の一本化、B配車コーディネート(予約制)、Cタクシーを参入させたDRT(デマンド・レスポンシブ・トランスポート=需要応答型公共交通)の手法検討を含めた仕組みのルール作り、D人材育成――などがあがっている。同区では札幌の事例なども研究、多角的に検討している。 世田谷区保健福祉部保健福祉活動推進課長の話「移動困難者30000人という膨大なニーズにこたえていくには、NPOだけが頑張っていても供給には限界がある。民間のタクシー会社にも協力を仰ぎ、配車の仕組みを作っていきたい。」 『《練馬福祉協》運賃2分の1ルール初判断/セダン2`810円、ストレッチャー500円加算』(東京交通新聞2005.7.18) 東京都練馬区は12日開かれた福祉有償運送運営協議会・幹事会で有償運送サービスに適用されている「タクシー運賃の2分の1ルール」について独自解釈により目安料金を策定した。迎車料金と予約料金等を加えた予約型のタクシー運賃の半額を試算したもので、セダン型車いす対応車は2`で810円、5`で1290円、ストレッチャーはプラス500円となる。同ルールにより具体的な目安料金をはじいたのは全国で初めてで、「2分の1ルール」の解釈に悩む各地の運営協の論議に影響を与えそうだ。 有償運送の料金は、国土交通省ガイドラインでは「タクシーの上限運賃の概ね2分の1以下を目安に地域特性等を勘案して判断する」と幅のある表現になっており、実際、2分の1を超えていたり、判断に迷うケースが多い。練馬区運営協では「『概ね2分の1』かどうかをどう判断すればよいか、はっきりさせるべき」との意見が出、12日の幹事会で区が試案を提示し了承された。 試案によると概ね2分の1判断では、予約型のタクシーの実車想定運賃を基に、迎車料金660円、予約料金400円、ストレッチャー料金1000円をプラスした運賃を先ず弾き出し、その2分の1を有償運送料金と明示した。タクシー運賃は予約と迎車で乗車時点で1060円からスタート、2`で1620円。セダン型有償運送料金はこの半額の810円となる。ストレッチャーは1620円より1000円増額とし2620円、この有償運送料金は1310円となる。 NPOの有償運送料金がタクシー運賃の2分の1を上回る点への対応では、全ケースで「概ね2分の1」以下である必要はなく、NPOの運行実績から総合的に運賃大系を判断するとし、一定期間、NPOが運行した実績からタクシーの想定料金表で換算し、総額を比較し「概ね2分の1」以下であればよい、とした。NPOが「出庫・帰庫」距離で運賃設定している場合は、「乗車〜降車」距離の記録を取り、相応するタクシー運賃と比較する、とした。 練馬区が全国の運営協の先陣を切って「2分の1ルール」の判断を明確化したことで、判断内容が他地区の運営協の目安ともなりそうだ。同区はこのルール判断以外にも「80条許可後のフォロー体制」、2種免許に替わる「移動サービス研修」について全国に先駆けて独自に方針決定している。 『国土交通省/ユニバーサルデザイン政策大綱案を策定』(東京交通新聞2005.6.20) 国土交通省は17日、身体障害の有無や年齢、性別、言語などの区別がなく利用できる公共交通・都市環境づくりの指針「ユニバーサルデザイン(UD)政策大綱」案を策定、公表した。バリアフリー政策の対象に、タクシーサービスや学校施設など交通機関・公共空間の拡充の必要性がうたわれた。バスは車両のオールバリフリ化を明記。駅前など「交通結節点」の乗り継ぎ円滑化も盛り込まれた。いずれも、交通バリアフリー法の見直しなどを通じ法的に位置付けられる方向だ。同案には27日まで一般意見募集(パブリックコメント)が行われ、月内に決定される。 UD大綱は、交通バリアフリー法(公共交通・駅施設対象、2000年制定)とハートビル法(建築物対象、1994年制定)の見直し・統合論議の土台となる。個々の施設整備の側面から脱却し、「いつでも、だれでも、自由に、使いやすく」というUDの考え方を基に、連続的な移動環境をつくるのが目標。少子・高齢化や観光交流、住民参画、ユビキタス・ネットワークなどの視点を重視。これまで同省内で討議してきたバリアフリーのあり方、公共交通円滑化、自律移動支援システムの各懇談会の結果も取り入れた。 バス・タク関係では、路線バスへのノンステップ(低床型)車両導入だけでなく、コミュニティバス、観光バスを含むバス全体のバリフリ化を表記。福祉タクシー、乗合タクシー、STS(スペシャルトランスポートサービス=個別輸送サービス)の提供の促進が強調された。 『《ラウンドテーブル》ネットワーク生かして/関西STS連絡会事務局長 柿久保浩次』(東京交通新聞2005.5.23) 交通バリアフリー法施行と同じ年(2000年)に関西STS連絡会を立ち上げ、さまざまな地域、取り組みの経緯の異なった約120団体グループでネットワークを形成しています。 最近、つくづく感じることは、移動・送迎サービスの遅れた現状と、それぞれの分野での連携と協力の必要性です。 関西で唯一の福祉移送特区・枚方市の報告書には「高齢者(要支援)と障害者(手帳交付)が1万8千人。それらの需要を賄いきれず、多くの潜在利用者が外出の制限を余儀なくされている」とあります。 「ケア輸送サービス飛躍へ/今年は試金石の年」(本紙1月10日)も、国交省「80条全国ガイドライン」の各自治体運営協議会設立の動きは、西日本では鈍いといわざるを得ません。 一方、移動・送迎サービスの先進諸国のような国・自治体によるシステムも遅れており、私たちはそれぞれの現場で悪戦苦闘しています。 福祉タクシー事業者、コミュニティバスなども立場こそ違え、同じような難題を抱えていることでしょう。 私たちは、支えあい活動、社協、介護保険、支援費、福祉タクシー、当事者団体、大学関係者が集い、現場が抱える課題の情報交換、セミナーの共同開催、運転研修、地域福祉の調査研究などを地道に取り組みながら、近い将来の相互乗り入れ、共同運行、相乗り移送なども想定しつつ、情報センター的役割を目指しています。 各分野それぞれの特性を生かした連携と協力のネットワークで、各自治体の運営協議会の促進や、交通バリアフリー法、地域交通会議の動きにも注目し、一歩でも「誰もが安心して移動できるまちづくり」に近づけることを願いながら…。 『=大阪府=福祉有償運営協で連絡会/実施の問題点など協議』(東京交通新聞2005.5.23) 大阪府は16日、大阪市中央区のマッセOSAKAで「福祉有償運送運営協議会連絡会」を立ち上げ、座長に三星昭宏近畿大学教授(枚方地区運営協会長)を選任したほか、設置要綱など決めた。大阪府、近畿運輸局、府内5ブロック(大阪市、北摂、河北、中部、泉州)と枚方市の6地域運営協で構成する横断的な組織。福祉輸送の着実な推進のために設けた。 連絡会は年1、2回開催し、福祉有償運送の@許可及び更新申請にかかわる疑義、A課題や問題点等適正な実施にかかわる事項――などを協議していく。連絡会の事務局は大阪府健康福祉部に置く。 連絡会の構成メンバーは次の通り(敬称略)。 座長=三星昭弘、▽学識者委員=日野泰雄(大阪市立大学大学院教授、大阪市)、新田保次(大阪大学大学院教授、北摂)、吉川耕司(大阪産業大学教授、河北)、土橋正彦(大阪産業大学教授、中部)、足立啓(和歌山大学教授、泉州)、▽行政側委員=安達和男(大阪運輸支局輸送課長)、水本行彦(大阪府健康福祉部健康福祉総務課課長)と大阪市、池田市、大東市、八尾市、高石市の担当者。 『福祉運営協設置求め全国統一要請行動/移送ネット3団体』(東京交通新聞2005.5.16) 白ナンバーによる有償福祉移送サービスの許可取得期限が1年を切った。NPOボランティアが道路運送法80条の許可を取得するには地方自治体主宰の有償運送運営協議会の設置と了承が不可欠だが、全国約3000自治体のうち現在、設置は5%にも満たず遅々としている。「このままでは来年4月以降、違法行為として摘発されてサービスが停止し、多くの移動困難者が外出手段を奪われる」との危機感から、全国移送サービスネットワーク3団体が9日から月末まで都道府県に対し、運営協の設置促進を要請する運動を展開している。運営協の設置には地元タクシー業界も関与することになるが、残り1年弱の間にどこまで設置が進むか正念場に差しかかった。 許可取得期限控え正念場/「違法行為として摘発」懸念 運営協の設置促進に乗り出した移送ネットワーク団体は、@移送・移動サービス地域ネットワーク団体連合会(笹沼和利代表世話人、約400団体)、A移動サービス市民活動全国ネットワーク(牧野史子代表、約190団体・個人)、BNPO法人市民福祉団体全国協議会(米山孝平代表理事、約790団体・個人)――の全国組織3団体。 5月を統一行動月間に定め、連休明けの9日から全国の移送団体が都道府県に統一要請行動に入った。同時に設置動向を調査し6月10日までに回答するよう求めている。 要請では「運営協の設置遅延で多くの移動困難者が社会参加や通院等に不可欠な外出手段を奪われることを強く懸念する」とし、「国土交通省もタクシー事業者が提供している車両数は全タクシーの2・2%にすぎず、利用が集中する時間帯には必ずしもニーズにこたえきれていない実態があることを認めている中、NPO等から申請・相談があっても、運営協が設置されないのは自治体の認識不足と言わざるを得ない」と指摘した上で、「全県域の設置を誘導した神奈川では設置方針を決定して実際の申請が協議されるまで約半年を要しており、一部運輸支局は猶予期限切れの来年4月以降は末許可団体の摘発や家宅捜査は当然あり得るとの見解を公言しており、利用者やNPO等は強い危機感を持っている」と強調。 具体的に、@広域行政を担う都道府県の役割として各地域の移送・移動サービスを実施する市民団体の実態を把握する、ANPO等から設置要請があった地域では、速やかに市区町村を誘導し運営協を設置するか、都道府県主宰の広域運営協を設置する――の2点を求めている。 「設置強制を」 要請行動初日の9日には笹沼移送ネットワーク代表世話人、牧野全国移動ネット代表、田中尚輝市民協理事・事務局長ら3団体幹部が厚生労働省老健局振興課と国土交通省自動車交通局旅客課を訪れ、「運営協の設置は法的裏付けがないため、国交省と厚労省が地方公共団体に設置依頼する形式にとどまっており、現在の設置状況は全国約40地域、検討地域を含めても100にも満たない」として、設置を強制する措置を求めた。 これに対し、両省は「現在、設置動向を調査中で、調査結果を踏まえて6月の全国介護保険課長会議などで自治体に設置促進を呼びかけたい」と述べた。 同日、厚労省で記者会見も行い、田中氏は「自治体は設置に率先すべきだが、動きが鈍い。このままでは善意と非営利の移送サービス団体が摘発される事態になる」と危機感を表明。笹沼氏は自治体の動きが鈍い理由について「今まで市町村に交通政策がなかったことが大きい。今後、地方分権の流れを踏まえ、地域で交通政策を考える方向にシフトすべきだ」と述べた。 『医療・社福法人にも「有償移送」参入への道』(東京交通新聞2005.4.4) 厚生労働省は3月30日、病院、診療所、介護老人保健施設などの医療法人が実施できる付帯業務として、介護保険や障害者支援費の乗降介助と一体で行う有償の移送サービスを新設する旨、都道府県に通知した。 社会福祉協議会、老人ホーム、障害者施設などの社会福祉法人の業務についても、同省は付帯する移送サービスは公益事業の範囲内と判断している。これにより、医療系約3万法人、社会福祉系約1万8000法人の訪問介護事業所から、福祉有償運送事業に新規参入が相次ぐことが予想される。国土交通省は今後、申請ラッシュが見込まれるとして、地方運輸支局の受付窓口の対応を見直している。 現在、タクシー(リフト付き福祉タクと介護タク)、NPOボランティア、民間患者搬送といった供給者がサービス提供しているが、国土交通省の移送ガイドラインによる許可取得の猶予期限が約1年後に迫る中、「新移送業界」の形成に向けて医療法人と社会福祉法人の市場参加がはっきりしてきた。 『=ガイドライン検証でセミナー/関西STS連絡会』(東京交通新聞2005.3.21) 関西STS連絡会、移動サービスネットワークこうべは12日、神戸市の勤労会館で「全国ガイドライン検証セミナー」を開催、福祉移送にかかわるNPO団体、タクシー事業者など100人余が出席した。 セミナーでは近畿運輸局の田中俊幸自動車交通部次長が「道運法80条ガイドラインの現状」について特別講演したほか、三星昭宏近畿大学教授が「安心して移動できるまちづくりの課題」をテーマに基調講演。三星教授は、枚方市の福祉移送サービス運営協議会のあゆみを中心に福祉・地域交通の展望を語った。
『=大阪府=5地区で「運営協」設置へ』(東京交通新聞2005.2.21) 参入希望100件超すか 福祉有償タク界から2人参画 大阪府は道路運送法80条(有償運送の例外許可)ガイドライン通達に基づく福祉有償運送事業の「運営協議会」を、先行する枚方市を除き、府内を5つのブロックに分けそれぞれ設置する方針を固めた【表参照】。今月10日には各自治体の担当者を集め周知。3月末までに構成メンバーを決め、4月中に立ち上げる。府は社会福祉法人やNPOなどから参入希望者が100件を超えるものと予測している。近畿管内では京都府の京丹後市で新たな動きがみられる。他県では法4条に基づくタクシー事業(限定)許可が本筋との考え方も根強い。
大阪府が決めた「運営協議会」の設置単位は@大阪市(1市)、A北摂(10市町村)、B河北(6市)、C中部(12市町村)、D泉州(13市町)の5ブロック。構造改革特区で2年前に設置済みの「枚方市」と合わせ6ブロックとなる。府では非効率な運営を避けるため、地域特性や許可申請の可能性を踏まえ編成したという。 運営協の構成メンバーは現在調整中だが、5ブロックとも各自治体の担当者、大阪運輸支局、学識経験者に加え、タクシー業界からは、大阪タクシー協会と大阪福祉タクシー運営連絡協議会の双方から各1人計2人が入る方向だ。それぞれ地元の事業者が参画する形になる見込みだ。学識者の不足が伝えられており、複数ブロックを掛け持ちするケースも考えられる。予算措置は報酬や交通費が中心で少額にとどまるため補正等で対応する。複数自治体で構成するブロックは輪番で幹事を設ける。 新規許可申請の見込みについては、介護保険制度の「通院等乗降介助」の算定届け出事業者のうち、タクシー限定許可のない非営利法人が約100事業者。同様に支援費制度による非営利法人が約10事業者あり、これらの事業者から申請が想定できるとみている。このほかにも移送サービスを担うNPO団体などから若干の申請が出る可能性がある。府が掌握している介護保険算定の非営利法人は、15日現在で大阪市が14件、北摂26件、河北7件、中部16件、泉州35件の計98件。堺市や泉州南部の団体を主体に許可申請が出てくるものと見られる。 府は運営協の立ち上げについて、1月の市長会健康福祉部会・町村会福祉主担当者会の合同会議で説明。今月10日に中央区のマッセ大阪で、各市町村の有償運送事業担当者を集め、周知徹底した。具体的な動きは新年度からになる。 大阪府健康福祉部では「運営協議会のメンバー構成は2、3月で調整したい。4月中には全ブロックで立ち上げ、協議会の運営要綱などを固めたい。許可申請事業者の審査に入るのはその後になる。四半期に1回、年度で4回程度開催したいと考えている」(領家誠健康福祉総務課主査)と話している。 『「運営協」早期設置を 〜送迎支援の発展求め〜 関西STS連 自治体に要請』(東京交通新聞2004.7.12) 関西STS連絡会(上田隆志代表、2府4県約70団体)は3日、西成区で開いた移送サービスセミナーの席上、福祉有償運送に関する「運営協議会」を早期に設置するよう管内各地方自治体に要請していくことを確認した。すでに先月18日に大阪府、同29日には尼崎市に対し「公開要請書」を提出している。同連絡会は、関西圏の中で「福祉移送特区」へ参画した自治体が枚方市のみだったことを危ぐ、各地方自治体が地域福祉の現状について非営利団体を含めた協議の場を持つ必要を強調している。 関西STS連絡会が大阪府などに提出した公開要請書の中では、「運営協議会」のあり方に言及し、@「運営協」設置へ向けての準備の有無にかかわらず、“公平で自由な移動”確保という課題の中で非営利の移動送迎支援活動に制限を加える措置は避ける、A移動制約者への安全安心な移動送迎支援サービスを健全に発展させるため行政、非営利の市民活動の進展のため「ワークショップ(研究協議の場)」を早期に設置する――の2点を要望している。 同要請書をひな型に、各地方自治体に対し、同連絡会と最寄りの非営利団体等との連名で要請していく方向だ。同連絡会傘下の非営利団体は、3月の国土交通省の全国ガイドライン通達の後、急増しており、この2ヵ月余で倍増している状況。連絡会とは別に独自に「運営協」設置を当局に要請している非営利団体も出てきている。 同連絡会では、「全国ガイドラインに対する各自治体の見解は地域福祉の現状により多少の温度差があると思う。まずは各自治体担当部局との資料を伴った率直な意見交換が必要だと考えている」(柿久保浩次事務局長)と話している。 『=福祉介護輸送新制度スタート= [青]参入選択の幅広がる [白]公的位置づけ明確化』(東京交通新聞2004.5.24) 福祉介護輸送サービスの新制度が4月からスタートした。1台から営業できる患者限定、介護保険を適用できる介護限定、会員制の特定旅客と、青ナンバー輸送の参入選択の幅が広がる一方、白ナンバー輸送は公的な位置づけが明確となった。青ナンバーのタクシー会社も白ナンバーのNPOボランティアも、同じ福祉輸送市場のサービス提供供給者として道路運送法で括られたもので、今後、それぞれの特色を生かしながら、どう役割を発揮するか問われている。 《道運法で一括り》 4月からの新制度は、@介護タクシーなど青ナンバー事業者の基準整備(道運法4条・43条)、A白ナンバーのNPOボランティアの全国ガイドライン設定(同80条)、B青・白双方に対するヘルパー持ち込み自家用車制度の新設――の主に3つに分かれる=法的区分図参照。3月に国土交通省と厚生労働省が中間整理した上でまとめた。 青ナンバー事業者の基準整備は、従来の患者限定に介護保険の適用を受ける介護限定を新設、道連法4条の範囲を▽一般タク▽介護限定▽患者限定――と3種類に広げた。両限定は白ナンバーのNPOボランティアとの競争力を確保するため、1台での参入、メーター機不要の運賃設定など大幅な規制緩和が実施された。 両限定ではセダン車両も認められたが、その場合、介護保険の適用を受けないケースでもヘルパーか全乗連・全福協などケア輸送士研修修了の資格が必要だ。 NPOボランティア向けの全国ガイドラインは、NPO等の有償運送について道運法80条1項に8つの許可要件――@許可手続き、A運営協議会、B運送主体、C運送対象、D使用車両、E運転者の要件、F損害賠償措置、G運送対価――を定めた。有償ボランティアは同要件に沿った80条許可を2006年3月末の2年程度の猶予期間に取得しないと、介護保険の報酬請求ができないほか、同期限後も取得せずに有償運送していると白タクで摘発を受けることになる。 同要件の中の運送主体は法人に限り、任意団体のNPOや個人は輸送の安全確保の観点から対象とならない。任意団体や個人は認証を受けたNPOか自治体に所属する形で運送に携わる必要がある。社会福祉協議会に委託された任意団体は社協が運行主体となり申請することで許可を取得できる。 使用車両は、過疎地は車両の限定はないが、過疎地以外の一般の福祉有償運送は福祉仕様車しか認められず、セダン型の一般車両はセダン型特区の認定を受けた地域でしか使えない。有償NPOボランティアによるヘルパー持ち込み自家用車は、自治体主宰の運営協議会を経た80条許可が必要で、この場合の車両もセダン型は特区でしか使えない。青ナンバー事業者は即、ヘルパー持ち込み自家用車を80条許可申請できるが、NPOボランティアが申請しようとしても運営協議会の承認が要るため、同協議会の立ち上がっていない地域はいつまでもヘルパー自家用車を持ち込めない事態が続く。 |