《2012年度・報道資料ファイル》 『東大白熱討論/どうする「暮らし」の足―3分科会で突破口探る』(東京交通新聞2012.12.3)
地域の移動の問題を何とかしたい」と考える人が一堂に会し、本音で語り合う初の試みとして「くらしの足をみんなで考えるフォーラム2012」が11月25日、東大本郷キャンパスで開催された。バス・タクシー労使、NPO、行政、学識者、利用者など多方面からの参加者110人余が3分科会と全体会で移動の問題について白熱の議論を展開。加藤博和・名古屋大大学院准教授が基調講演し「各地の地域交通で苦しい取り組みを続ける人が集まって突破口を開きたい」と呼びかけた。 主催はNPO全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)。国土交通省、厚生労働省、全国社会福祉協議会、日本地域福祉学会など7団体が後援した。来賓の国土交通省総合政策局の藤田耕三・公共交通政策部長、企画に関わった一人として東京交通新聞の武本英之編集局長があいさつした。 加藤准教授は講演で、地域公共交通関係者の課題として、@逆風環境で余裕がなく、何をしていいか分からない事業者、A見た目の低コストに走る市町村、B「お願い型」のまま、モラルハザードを脱しない住民・地域、C現場を知らず補助金の出し方がわからない国、都道府県、D安い給料と薄れる使命感で意欲低下が激しい輸送業従事者――の5点を指摘した。 利用者目線での事業者の取り組みや、地域の自発的な動きの成功例を紹介し、関係者が人、金、心、口を分担する重要性を訴え、「各者をつなぐコーディネーターを育成する土壌づくりが大切だ」と述べた。 地域公共交通どう創る 第1分科会(座長・吉田樹福島大学特任准助教)では「地域公共交通をどう創るのか」と題して行政などの取り組みを紹介、課題に既存事業者が地域公共交通計画の抵抗勢力にもなってしまう点などをあげた。 新たなビジネスモデル 第2分科会(同・大井尚司大分大学准教授)では新たな取り組みとビジネスモデルをテーマに議論。関東運輸局認定の地域公共交通マイスターの藤原俊正・愛鶴/ハートフルタクシー副社長(神奈川)によるタクシーの多様な取り組みや、全但バス(兵庫)による不採算路線復活のための関係者全員参加型の実証実験などが報告された。 議論の中で「NPOとタクシーは敵同士のようになっているが、移動ニーズをNPOが発掘し、その一部にタクシーが応える協働が必要」との提案があった。また「取り組みに労組が反対することも多い。移動困難者の実態を知ってもらうため、地域住民と運転労働者の交流会を開くべき」との意見もあった。 移動困難者のニーズ 第3分科会(同・猪井博登大阪大学助教)のテーマは移動困難者のニーズ。福岡県タクシー協会副会長の貞包健一・三ヶ森タクシー社長が介護事業者として発表した。ニーズの種類ごとに違った対応が必要と確認した。誰が費用を負担するのか、それぞれの立場で意見交換した。 全体会の討論では“提案力”の重要性を議論。提案力のない事業者へのフォローアップの仕組みの必要性も提起された。国交省の藤田政策部長が「交通は民間の守備範囲を超えつつある。広い意味の公(おおやけ)と民間を調整・統合したうまい仕組みが必要だ。ただ「民間はもういい」ということではない。特にバス・タクシー業界は保守的にならず、もっと頑張ってほしい」とエールを送った。 『《交通論壇》タクシーの果たすべき役割「超高齢社会へユニバーサル研修生かせ」 桜美林大学 教授 島津 淳』(東京交通新聞2012.8.27) 要支援・要介護者に公共交通の確保必要 わが国は少子・高齢・人口減少社会と言われているが、高齢化率は2010年には23・1%となり超高齢社会に突入し、2055年には高齢化率は40・5%になると予測されている。急速な高齢化は、75歳以上の後期高齢者の著しい増加となり、要支援・要介護高齢者の急激な増加ともなる。 このような超高齢社会では、要支援・要介護高齢者や障がい者等が通院や社会参加できる公共交通機関の確保が望まれ、2006年には「バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)」(国土交通省)が施行された。2010年末には「ユニバーサルデザイン(UD)」の考え方に基づいた車両仕様である「UDタクシー」車両の販売が国内メーカーにより開始された。 タク乗務員にユニバーサルドライバー研修を 「UDタグシー」は超高齢社会の進展と相まって、ユニバーサルデザイン(UD)社会の実現に向けて急速にタクシー業界において普及れていくものと思われるが、ハード面の整備とともにソフト面の整備が必要となる。これまでも障がい当事者団体から、車いす利用者が手を挙げてもタクシーはなかなか止まってくれず、利用しづらいという声が多くあった。これらの出来事が、全面的に福祉有償運送が大きく拡大したという見方もある。多くのタクシー乗務員に必要なのは、セダン型タクシー車両乗務員も含めて、急速に進展する超高齢社会に向けて、高齢者や障がい者に関する基本的な知職や対応する技術を身につけることではないか。 現在、「全国福祉輸送サービス協会」「全国ハイヤー・タクシー連合会」が組織するユニバーサルドライバー研修推進実行委員会が主催する「ユニバーサルドライバー研修(バリアフリー研修)」がタクシー乗務員を対象に行われている。 ユニバーサル研修は7つの特徴を備える この研修には7つの特徴がある。@1日7時間の研修で基本知識をマスターできる。研修科目は「タクシーとユニバーサル社会(50分)」「お客様とのコミュニケーション(30分)」「お客様の理解と接遇・介助方法(250分)」「車いすの取り扱い方と乗車・降車(90分)」となっている。A研修内容は「講義」「映像」「討論」「実践」となっており、受講生(800人強)を対象としたアンケートでも80%の方から「今後お客様に接していく上で非常に参考になった」との回答を得ている。B要介護高齢者や障がい者等お客様別の乗車から降車までの接遇・介助法を研修しており、明日からの実務に役立つ。C低廉な受講価格、Dいつでも、どこでも事業所単位での研修が可能、E研修修了者には「修了証」を発行する。F受講修了者がお客様に対して「安心・安全の接遇・介助」が取り組めるよう、所属事業者が研修修了者を対象として「業務中の第三者に対する賠償責任保険」に加入できる制度を設けた。 これから未来に向かって超高齢社会が進展するなか、全てのタクシー事業者と乗務員は、要支援・要介護高齢者や障がい者等が社会参加できるための地域公共交通機関としての役割を果たさなければならない。この「ユニバーサルドライバー研修(バリアフリー研修)」は、全てのタクシー事業者と乗務員にとって、必須のものと言えよう。 『《外出手助けUDタクシー》認知度アップを/横浜市、助成で後押し』(神奈川新聞2012.8.12) 外出が困難な人でも利用しやすい構造の「ユニバーサルデザインタクシー」(UDタクシー)の県内第1号がお目見えして8ヵ月余がたった。車いす利用者などに好評で、全国最多の59台が街を駆ける。一方、一般にはなじみが薄く、事業者は知名度アップに試行錯誤を重ねる。横浜市が後押しに本腰を入れるなど、普及に向けた動きも加速し始めた。 ワゴン型のUDタクシーは、乗車口にステップがあるなど、年齢や障害の有無を問わず乗り降りしやすいのが特徴。後部に可動式のスロープを装備し、車いすに乗ったままでも乗車できるほか、大型のスーツケースなども簡単に乗せることができる。通常は4人、車いす利用時は3人が乗車可能で、料金システムは通常のタクシーと同額だ。県タクシー・協会によると、横浜市内16社で31台、県内では35社で59台が運行している。 同市中区の主婦、小林寿子さん(45)は、長男の歩くん(3)がリハビリセンターに通院する際、月2回ほどUDタクシーを利用する。歩くのは体が不自由なため、障害児用のバギーに乗っているが、「折りたたまなくても乗せられるので助かる。外出しやすくなった」。同じセンターに通う母親にも勧めているが、「台数が少ないと、利用時間が重なった際には乗れない可能性がある。もっとUDタクシーを導入してほしい」と望む。 昨年11月、県内で最初に導入したアサヒタクシー(同市中区)のUDタクシー専任乗務員、菊池浩さん(42)は「外出のお手伝いができ、やりがいを感じる」と話す。 一方、認知度が低く「車いすなどを使う客は月1回いるかどうか。一般の利用客も少ない」。ワゴン車のため、料金が高いと誤解されたり、介護専用のタクシーと間違えられたりすることも。タクシー乗り場で客持ちの際には車外に出て声掛けするなど“営業努力”を重ねる。県タクシー協会は6月から、UDタクシーの乗務員向けに研修を開催。介助の方法を学ぶなど業界を挙げて普及に取り組む。 横浜市も後押し。本年度から国の補助金に上乗せして助成し、2014年度末までに、市内を走る一般タクシーの5%にあたる240台を目標に導入を進める。障害福祉課は「外出困難者にとって、タクシーは有効な移動手段。UDタクシーを普及させて不便さを解消したい」と話す。 アサヒタクシーの藤井嘉一郎社長(53)は「荷物が多い人や育児中の母親からも好評で、認知度が上がれば普及も進むはず。台数を増やすだけでなく、サービスの向上にも力を入れて、幅広い人に利用してもらいたい」と話している。 『《大阪福祉配車センター》利用者増え自立運営へ/12年度は4000回目標』(東京交通新聞2012.7.16) 全福協大阪支部が運営主体となっている「大阪福祉タクシー総合配車センター」が自立運営への道を歩み出している。予約配車回数が順調に伸びている事情などを踏まえ、2012年度事業予算では大阪福祉タクシー運営連絡協議会からの補助金100万円を打ち切って運営する態勢を組んだ。 11年度の配車回数は3683回で前年度比48%増、月平均307回と急伸。新年度に入ってからも、4月は332回で前年同月比15・3%増、5月が359回で同37・6%増、6月が447回で42・2%増と月間で過去最高値を記録。3ヵ月間トータルでは1138回、前年同期比31・9%増。1日平均配車回数は12・5回となっている。急伸長の要因は、3年前から取り組んだ広報PR活動の効果が大きい。特に大阪市発行の福祉リフト券に福祉配車Cの電話事号を記載したことでリピーター顧客が増えた。同時期に利用しやすい運賃制度に変更(迎車料金1000円廃止と距離制運賃の新設等)したこともプラスに作用した。 新年度の収支予算総額は605万円。会費収入が272万円、配車手数料(1回100円)が目標数4000回で40万円、サポートクラブの会費収入が38万円、福祉リフト券の負担金収入35万円などを合わせて計385万円。これに前期繰越金が220万円ある。支出額はオペレーター2人の人件費が320万円。賃貸料、電話代、通信費などの運営経費をあわせて409万円。予備費196万円で編成している。 配車目標の4000回は、例年秋口から需要が増えており、今のペースなら充分達成が可能とみられる。センターに登録する事業者数は今年3月末現在で82社126台という状況。11年度は準会員13社が新規入会し、正会員を含めた6社が退会している。登録者数は745人。運営上の課題では、配車時に事業者が顧客を囲い込んでしまうケースが多々散見される。このため大福協では、利用者への名刺配付を禁止、違反した場合には除名するなどの罰則規定を検討している。苦情に対しても厳格に対応し、6回以上苦情が入った場合は除名措置を探る方針だ。 最近の予約状況を聞くと、「大阪市内の病院にリハビリで往復送迎する輸送が増えている。車イスの利用者は乗り心地の良い車両を指定してくることが多い」(事務局)と話す。 『《タクシー事業法案》交通基本法など成立視野』(東京交通新聞2012.6.25) 今通常国会の会期が9月8日まで79日間、大幅延長されたことから、タクシー業界労使が推進する「タクシー事業法案」の国会提出・成立が現実味を帯びてきた。同法案をめぐる与野党間の修正協議は、消費税・社会保障一体改革の動向をにらみ、7月に入って本格化する見通しだ。民主党タクシー政策議員連盟の要綱案に対し、最大のカギを握る自民党側の対案は、先週段階でまだ具体化していない。国土交通省の提出法案では、鉄道・バス・乗合タクシー・客船など移動手段の確保・向上をうたう「交通基本法案」、乗合バス・乗合タクシーの運行手続き緩和を含む「低炭素まちづくり法案」の成立が視界に入った。 自民党の対案は、タクシー特措法(特定地域タクシー事業適正化・活性化特別措置法)の枠組みをベースとする方向で、衆院法制局に作成を指示した条文要綱が固まり次第、議連幹部会を経て総会に諮る考え。民主党側のタクシー事業法案は、自民の対案によって原型が変わり、修正協議が調えば民自公3党の“タクシー新法案”が登場する可能性がある。減車や運賃設定に強制力を持たせる是非や手法で、どう折り合うかが大きなポイントとなり、民主案が法に位置付ける運転者賃金などの労働規制、個人タクシーの取り扱いも注目される。消費増税法案の採決をめぐり民主党内が分裂した場合、事業法案そのものがどうなるかも見逃せない。 昨年の通常国会以降、継続扱いの交通基本法案は「いよいよ現実のものとなってきた」(国交省関係者)と成立に期待感が高まっている。衆院国土交通委員会で取り上げる優先順位付けは流動的だが、会期の大幅延長は、同法案や、環境、経済産業両省と共菅の低炭素まちづくり法案ともに成立に向け前進する格好となった。 『《国の出先機関移管》運輸局は対象外/有償運送、運転代行焦点に』(東京交通新聞2012.5.7) 政府の地域主権戦略会議(議長=野田佳彦首相)は4月24日の「アクション・プラン」推進委員会(委員長=川端達夫総務相・地域主権担当相)で、国の出先機関の移管問者について、事務・権限を移す対象を当面、国道・河川を管理する地方整備局(国土交通省)、経済産業局(経産省)、地方環境事務所(環境省)に据え、受け皿は自治体がブロック単位で組織する「広域連合」とする案を了承した。バス・タクシー・トラック事業を許認可・監督する地方運輸局は外れた。
出先機関の原則廃止に向けたアクション・プラン(2010年12月閣議決定)に基づき、同委では整備局、運輸局を含め8府省13機関を検討の対象に掲げていた。 個別の事務・権限をめぐっては、自動車関係で国交省が10年の「自己仕分け」を通じ、運転代行業と、希望する市町村に限り自家用有償旅客運送の移譲を容認したが、現時点で具体化はしていない。動向が注目される。 現政権は今国会に関連法案を提出する方針。広域連合は出先機関が管轄する区域の都道府県・市町村でつくり、北海道と沖縄は単独扱いとなる。近畿圏で関西広域連合(連合長=井戸敬三兵庫県知事)がすでに発足し、九州で「九州広域行政機構」、四国で「四国広域連合」の設立をそれぞれ知事会が目指している。 この日の会合で四国知事会が経産局の“丸ごと移管”を表明。九州地方知事会も同様のスタンスを唱えた。一方で全国市長会は「都市自治体への協議が十分でない。拙速に進めないように」とした。 座長に辻元氏就任/民主・国交部門会議 民主党の政策調査会・国土交通部門会議の座長に4月24日、辻元清美・元国土交通副大臣が就任した。消費税増税法案の閣議決定に反対して前任の松崎哲久氏が辞任届けを出していた。辻元座長は当面、同党タクシー政策議員連盟の議員立法「タクシー事業法案」などに対し、党の決定手続きにかかわる中心的な立場となる。共同座長は奥田建国交副大臣で変わらず。 辻元座長による国交部門会議の初会合が4月25日、衆院第一議員会館で開かれ、「地域主権」問題をめぐり議論が交わされた。政府の地域主権戦略会議の動向を踏まえ、福島県の立谷秀清相馬市長、新潟県の國定勇人三条市長、愛媛県の伊藤宏太郎西条市長からヒアリングした。3氏はいずれも、県・市町村で組織する「広域連合」に国の事務・権限を委譲することに慎重な姿勢を表明した。 同座長は終了後の会見で「改革は前に進めるが、地方整備局など出先機関の移管の問題は自治体の間で意見が割れてる。特に災害対策やインフラ整備では国家と直結していたほうが安心という考えだ。ヒアリングで他に移管してほしい機能があるかどうか聞いたが、なかなか出てこなかった」と述べた。党の地域主権調査会に具申する意向を示した。 『《福祉タクシー共同配車》中部初 移送ネットワークACT』(東京交通新聞2012.4.9) 福祉・介護移送ネットワークACT(名古屋市)は4月2日、共同配車センターの業務を開始した。1人1車を中心とした福祉限定タクシー事業者が参画する配車センターは中部委地区で初めて。15事業者20台での開始で、今後、利用者への浸透と参加事業者がどのように拡大するか注目される。
配車センター初日の2日には、問い合わせ10件、利用予約2件があった。問い合わせは「介護タクシーを知らなかった」「どういった時に使えるのか」「料金はいくらか」といった内容。 受注システムでは、料金の概算の検索機能と、事業者ごとのスケジュール管理ができるのが特徴。問い合わせで日時や発着地、車いすの要・不要などを入力すると、時間制運賃と乗降介助科の合算が示される。個々の事業者が配車システムにログインし、すでに持っている予約日程や休日なども管理できる。 事業者の参加は、入会金20万円。会費月額1万円。鎌倉代表は「今後は、事業者全てがセンターの運営に関心を持ち盛り上げていくことが大事。オペレーターを活用し、家族に代わって一人暮らしの親の生活状況を確認する電話サービスも展開していきたい」と話している。 『《岐阜 移動サービスセミナー》高齢者や障害者助けたい/「負担を分散するのがよい」』(中日新聞2012.3.27) 高齢者らの外出を手助けする移動サービスに関するセミナーが25日、岐阜市前一色の長森コミュニティセンターであった。体の不自由な高齢者や障害者は、バスやタクシーなどの公共交通機関利用が困難。このため、NPO法人や社会福祉協議会などが、国の認可を得て自家用車で運ぶ「福祉有償運送」が5年ほど前に制度化され、県内では約30団体が実施している。
セミナーは、県内の福祉団体で組織するNPO法人「ぎふ市民協」が主催。移動サービスの普及に努めるNPO法人「全国移動サービスネットワーク」(東京)の中根裕理事長を講師に招き、福祉関係者約50人が聞き入った。 中根理事長は、福祉有償運送は交通機関利用が難しい人に、個別のケアができると強調。しかし、全国の実施団体のほとんどが赤字であることを紹介し、「一つの事業者で負担を抱えず、地域やネットワークで分散することが大事」と訴えた。 |