《2013年度・報道資料ファイル》


《12月4日施行》「交通政策基本法」成立/地域の連携、責務うたう』(東京交通新聞2013.12.2)
「公共交通網の確保・機能向上や国、自治体、事業者の責務・連携など、交通分野の基本理念をうたった「交通政策基本法」11月27日、参院本会議で成立した。12月4日に公布、即日施行される予定。国土交通省は、具体策を盛り込んだ閣議決定案件の「交通政策基本計画」の策定作業に入り、並行して税財政支援を本格化させる。交通安全対策基本法と並ぶ“交通の憲法”の誕生で、住民の移動ニーズを充足させ、鉄道、乗合バス、タクシーなど地域公共交通の再生・活性化につながるか、各界で期待が高まっている。
 交通政策基本法は国交省立案の新法。民主党政権時代に作られた原案に、大規模災害時の代替移動手段の確保や施設の老朽化対策、妊産婦・乳幼児連れへの配慮、空港・港湾の国際競争力の強化などの視点が新たに追加、補強された「移動権」保障の記述は見合わせた
 同法案の参院審議は11月21日の国土交通委員会で趣旨説明がされた後、26日に、浅野正一郎名誉教授(交通政策審議会地域公共交通部会長)ら学識者3人に対する参考人質疑と、与野党計7党8氏が質問に立ち、集中審議が行われた。採決では、衆院と同様、共産を除く賛成多数で可決した。付帯決議12項目従事者の労働環境の改善人材の育成・確保や、2020年東京五輪をにらんだバリアフリー化の推進などが強調された。翌27日、本会議に上程され、藤本祐司国交委員長が審議経過と概要を説明。出席者投票総数229のうち賛成217、反対12で可決、成立した。
 新法制定後の次の課題は、地域公共交通活性化・再生法の改正交通政策基本計画の策定国交省は同計画案を交政審と社会資本整備審議会(ともに国交相の諮問機関)の「合同計画部会」に諮り、来年中に仕上げる方針だ。

〈国交省〉地域公共交通網づくり/主体は自治体に/活性化・再生法改正案で
 国土交通省は11月28日の交通政策審議会(国交相の諮問機関)・地域公共交通部会の2013年度第4回で、来年の通常国会に提出予定の地域公共交通活性化・再生法改正案の概要を提示、自治体が「持続可能な公共交通ネットワーク」づくりの主体となり、バス、タクシー、自家用車有償運送などの組み合わせを重視する方向を打ち出した。交通政策基本法に沿い、関係者の役割・責務を明確化し、合意形成を促進する規定を整える考えも示した。
 現行法では、自治体主宰の協議会が「地域公共交通総合連携計画」を策定し、バス・タクシー事業者への運行委託など事業化を促す仕組み。国交省は「民間事業者に任せきりだった従来の枠組みから脱却し、地域の総合行政を担う自治体が中心となって、事業者、住民など関係者が知恵を出し合い、合意の下で構想し、実現させる」とした。具体的に、公共交通をまちづくりや地域戦略と一体で考え、サービスの充実と利用者の増加を一体で実現、▽地域特性に応じ、鉄道、民間路線バス、コミュニティバス、デマンド交通、タクシー、有償運送、スクールバス、福祉バスなど多様な手段を有機的に組み合わせ、身の丈に合ったネットワークを形成、▽住民に利用を促し、一定の負担も織り込んで持続可能性を確保、▽数値化・「見える化」した目標を設定――などの措置を掲げた。国が重点的・効率的に支援する新たな予算制度を検討し、人材育成や独占禁止法上の課題の整理にも乗り出すとした。次回の18日に中間取りまとめとして方針を固める。

「交通政策基本法」の概要
【趣旨】国際・幹線・地域交通について、国が自治体、事業者などと密接に連携し、施策を総合的・計画的に推進するため、基本理念を定め、関係者の責務を明らかにし、施策の基本事項を定める。政府に「交通政策基本計画」の閣議決定と国会への報告を義務付ける
【基本理念】○交通に対する基本的なニーズの充足   ○交通機能の確保・向上
○地域の活力向上   ○大規模災害への対応   ○地球環境負荷の低減
○適切な役割分担   ○国際競争力の強化   ○安全の確保
【責務】 国、自治体、交通関連事業者、施設管理者、国民など
【主な施策】交通政策基本計画の策定
○交通関連事業の健全な発展、基盤強化  ○通学、通院など生活交通の確保
○災害時の代替交通手段、避難の確保  ○交通施設の老朽化対策
○高齢者・障害者、妊産婦・乳幼児同伴者の円滑な移動  ○まちづくり、観光立国施策との連携
○情報通信技術の活用  ○交通従事者の確保と労働環境改善=付帯決議
※11月27日成立、12月4日公布・施行予定」



《全国移動ネット》自家用有償旅客運送の事務・権限移譲をめぐり学習会開催』『ガバナンス』2013.12月号)
「政府の地方分権改革有識者会議で9月、自家用有償旅客運送の事務など47事項の地方移管、事務の見直しが事実上決まった。これを受けてNPO法人全国移動サービスネットワークは11月10日、都内で分権や権限移譲などに詳しい学識者などによる学習会を開催した。
来春にも一括法案を国会提出へ
 政府の地方分権改革有識者会議(座長=神野直彦・東京大学名誉教授)は9月、自家用有償旅客運送の事務など47事項の地方移管、事務の見直しを事実上決めた。見直し方針を年内に閣議決定、来春にも一括法案を国会に提出する見込みだ。
 自家用有償旅客運送制度は、2006年の「道路運送法」改正で創設された。過疎地域での輸送や福祉輸送といった、地域住民の生活維持に必要な輸送について、国土交通大臣の登録を受けた市町村やNPO等が自家用車を用いて有償で運送できる制度だ。自家用有償旅客運送は2013年3月現在で3036団体、車両数1万5225で、輸送人員は2684万人(2011年度推計値)に及ぶ。この事務・権限を、希望する市町村に移譲するのが有識者会議の方針だが、移譲に向けて検討すべき課題を学ぶために開いたのが、今回の学習会だ。講師は、佐賀県で地方分権改革を担当する日野稔邦氏(総括本部政策監グループ)嶋田暁文・九州大学大学院法学研究院准教授。学習会には有償旅客運送の関係者や自治体職員など約60人が集まった。
事務権限は自治事務にすべき
 まず、日野氏が地方分権の観点から、地域交通に関する権限を地方に移譲する意義を解説。公共交通のインフラが乏しい地方では、「地域で住み続けることができる社会」をつくる上で自家用有償旅客運送の権限移譲が求められるとし、その認知度を高め、世論を盛り上げる必要があることを指摘した。
 嶋田准教授は法的観点から、権限移譲とその制度設計について説明した。権限移譲のメリットは、登録不要領域の拡大につながり得ること(「有償」「無償」の判断を自治体が行うことが可能になる)で、そのためには、@現在と同様、「有償」「無償」の判断基準が法律及び政省令で規定されないこと、A当該事務権限が、法定受託事務ではなく自治事務として位置づけられること――を条件として示した。
 権限移譲は、いわゆる手上げ方式が想定されているが、その法的スキームは、同一事務について「国の事務」が混在しないように、「希望する市町村」+「それ以外の場合は都道府県」としたほうが良い、と指摘。不合理な「ローカル・ルール」(独自基準)の是正に向けては、▽利用者の移動の自由を重視することを法律上明記する、▽運営協議会の合意を登録要件から外し、協議会を諮問機関化する、▽ローカルルールを設ける場合は条例で定める――などを提起した。参加者からの 「移譲に手を上げる市町村はどのくらいあるのか」という質問に、嶋田准教授は「過疎地運送ではあると思う」と回答。さらに自家用有償旅客運送に対する認知度を高めるため、マスコミや行政への働きかけの必要性などが議論された。」



《「有償運送権限移譲検討会」初会合》年内に「道路運送法」改正案骨格/登録要件見直しは来年3月結論』(東京交通新聞2013.10.14)
国土交通省は8日、NPOボランティアなど自家用有償旅客運送の事務・権限移譲あり方検討会(座長=後藤春彦・早稲田大学創造理工学部長)の初会合を開き、「希望する市町村」を基本に国から自治体に移すための「道路運送法」改正案の骨格を年内に決める方針を確認した。中間取りまとめに盛り込む。法人格や旅客の範囲、対価など運送団体の登録要件・手続きの全国的な緩和・弾力化措置は年明けに議論し、3月予定の最終まとめの時点で結論を出す方向。道運法施行規則(省令)や通達類が改正される。
 冒頭、田端浩自動車局長は「地方分権改革推進本部の決定を踏まえ、法改正を予定している。実務面や国と地方の連携、基準の連用など詰めるべきことがたくさんある」と協力を求めた。後藤座長(地方分権本部地域交通部会長)は「分権改革にはスピード感が求められる」と述べた。来年3月に「道運法」を含む「地方分権改革一括法案」が閣議決定、国会に提出される。
 論点として、希望する市町村への移譲の法的枠組みをどう構築するか、▽移譲された事務は「自治事務」か「法定受託事務」か、▽複数の市町村を区域とする運送の登録主体をどう整理するか、▽移譲先の市町村で輸送の安全のための執行体制をどう整備するか、▽国と市町村との連携、国による支援をどう担保するか――などが掲げられた。
 意見交換でNPOや自治体側が「自由な裁量で地域の送迎を手がけたい」としたのに対し、タクシー業界からは「分権はやむを得ないが、現行のルールをきっちり守るべき」との意思が示された。」



「大阪市福祉有償運送運営協議会(協議基準一部変更)」(大阪市福祉有償運送運営協議会「配布資料」2012.10.25より)
(1)【改正前】第3条(収受する対価)
《運送の対価以外の対価》・迎車回送料金を含め原則認めないこととする。
【2012年5月31日改正後】第3条(収受する対価)
《運送の対価以外の対価》
迎車回送料金については、個別の案件ごとに協議会において協議するものとする。その場合は、事前に利用者へ設定の必要性、金額等を説明し、設定の同意を得るようにすること。
・迎車回送料金以外の運送の対価以外の対価は、原則認めないこととする。

(2)【改正前】第5条(使用車両)
 次に掲げる自家用自動車であること。 ・寝台車 ・車いす車 ・兼用車 ・回転シート車
【2012年5月31日改正後】第5条(使用車両)
 次に掲げる自家用自動車であること。
・寝台車 ・車いす車 ・兼用車 ・回転シート車 セダン等(貨物輸送の用に供する自動車を除く。)
2 前項の規定にかかわらず、セダン等の使用にあたっては、原則として車いす対応車両を備えている法人等が、現に車いす対応車両を必要としない精神障害者又は知的障害者の会員を有し、かつ、真にセダン等による移送を必要としている場合において、個別の案件ごとに協議会において協議を経ることを必要とする。軽微な事項の変更の届出により、使用車両を追加する場合も同様とする。ただし、セダン等のみを備える法人等から運送の申し出があった場合についても、協議会において個別に協議しその必要性等を認めるときは、本文の規定にかかわらずセダン等の使用を認めることがある。
【2012年10月25改正】第5条(使用車両)
 次に掲げる自家用自動車であること。
・寝台車 ・車いす車 ・兼用車 ・回転シート車 ・セダン等(貨物輸送の用に供する自動車を除く。)
2 前項の規定にかかわらず、セダン等の使用にあたっては、原則として車いす対応車両を備えている法人等が、現に車いす対応車両を必要としない、次のいずれかに該当する会員を有し、かつ、真にセダン等による移送を必要としている場合において、個別の案件ごとに協議会において協議を経ることを必要とする。軽微な事項の変更の届出により、使用車両を追加する場合も同様とする。ただし、セダン等のみを備える法人等から運送の申し出があった場合についても、協議会において個別に協議し、その必要性等を認めるときは、本文の規定にかかわらずセダン等の使用を認めることがある。
乗降に介助を必要とする者
意思の伝達・理解が不十分である者
不安発作等の突発時の対応が必要であり介助・見守りを必要とする者

(3)【2012年5月31日改正後】第6条(運転者等)
3 セダン等を使用する場合には、第1項及び前項の要件に加え、運転者又は同乗者が次のいずれかの要件を備えていなければならない。
・介護福祉士の登録を受けていること
・介護保険法に基づくヘルパー研修又は障害者自立支援法に基づく障害ヘルパー研修の修了証明書の交付を受けていること
・国土交通大臣が認定する「セダン等運転者講習」を修了していること
・社団法人全国乗用自動車連合会等が行う「ケア輸送サービス従事者研修」を修了した者であること」



『道路交通法における登録又は許可を要しない運送の態様について』(国土交通省「イラスト版」より)
「道路運送法第2条第3項において、@他人の需要に応じ、A有償で、B自動車を使用して、C旅客を運送する、D事業を旅客自動車運送事業であると規定しており、@〜Dの要件全てに該当する場合は同法に基づく許可を受ける必要があります。
 個別の旅客運送行為が、許可等を必要とする態様かどうかについては、最終的には個別に総合的に判断されますが、Aの有償については客観的な判断が困難である場合も考えられることから、事案毎に許可等を要するか否かを例示しました。ご不明な点は、最寄りの運輸支局等にご相談下さい。

(1)サービスの提供を受けた者からの給付が、「好意に対する任意の謝礼」と認められる場合は許可等を要しません。
 運送行為の実施者の側から対価の支払いを求めた、事前に対価の支払いが合意されていた、などの事実がなく、あくまでも自発的に、謝礼の趣旨で金銭等が支払われた場合は、有償とは観念されないことから許可等は不要です。
※ただし、以下の場合は有償であるとみなされ、許可等を要することとなります。
・予め運賃表などを定め金銭の収受が行われる場合。
・会費として収受され、運送サービスの提供と会費の負担に密接な関係が認められる場合。
・「カンパ」などの運送とは直接関係のない名称を付して利用者から収受する金銭で、運送行為に対する反対給付と認められる場合。

(2)サービスの提供を受けた者からの給付が、金銭的な価値の換算が困難な財物や流通性の乏しい財物などによ りなされる場合は、許可等を要しません。
○日頃の移送の御礼として、自宅で採れた野菜を定期的に手渡す場合は有償とはみなされず、許可等を要しません。
○地域通貨の一種として、ボランタリーなサービスを相互に提供しあう場であって、例えば、運送の協力者に対して1時間1点として点数化して積立て、将来自分が支えられる側になった際には、積立てておいた点数を用いて運送等のサービスを利用できる仕組み等、組織内部におけるボランタリーサービスの提供を行う場合も有償とはみなさず、許可等を要しません。
※ただし、以下の場合は有償とみなされ許可等を要することとなります。
・流通性、換金性が高い財産的価値を有する金券や、希少価値を有する財物等の収受は有償とみなされ、許可等が必要です。
・サービスの交換にとどまる場合については、原則として許可等は不要であるものの、有料で点数を購入してもらうなどの場合や、地域通貨といってもその対象サービス内容、流通範囲、交換可能な財・サービス内容に応じ、許可等が必要となるケースがあります。

(3)ボランティア活動としておこなう運送において、実際の運送に要したガソリン代、有料道路使用料、駐車場代のみを収受する場合は許可等を要しません。

(4)市町村の公共サービスを受けた者が対価を負担しておらず、反対給付が特定されない場合などは、許可等を 要しません。

○市町村の事業として、市町村の保有する自動車により送迎が実施され、それらの費用が全額市町村によって賄われ利用者からは一切の負担を求めない場合は、許可等は要しません。
○利用者の所有する自動車を使用して送迎を行う場合は、単に他人の自動車の運転を任されただけであり、運転者に対して対価が支払われたとしても、それらは運転役務の提供に対する報酬であって運送の対価とはなりません。よって、許可等は要しません。

○デイサービス、授産施設、障害者のための作業所等を経営する者が、自己の施設の利用を目的とする通所、送迎を行う場合であって、送迎に係るコスト(ガソリン代等の実費も含む)を利用者個々から収受しない場合にあっては、当該送迎は自己の生業と密接不可分な輸送と解され、許可等は要しません。
※ただし、以下の場合は有償性があると認められ、許可等を要することとなります。
・運送者から利用者にガソリン代等と称して実費や運賃を要求する場合。
・施設等からの委託契約を受けて当該施設までの運送を行う場合。
・訪問介護事業所がおこなう要介護者の運送(介護保険給付が適用される場合)。
○子どもの預かりや、家事・身辺援助の提供が中心となるサービスを提供するものであって、運送に対する固有の対価(ガソリン代等の実費も含む)の負担を求めないものである場合は、当該送迎サービスの提供は有償の運送とは解さず、許可等は要しません。
※ただし以下の場合は、有償性があると認められ許可等を要することとなります。
・運送をおこなう場合と、おこなわない場合とで料金が異なる。
・送迎を利用する者と、利用しない者との間のサービスに差を設ける。
・運送に対する反対給付が特定される。」



《国交省》自治体に権限移譲/「道運法」改正案策定へ』(東京交通新聞2013.9.30)
国土交通省自家用有償旅客運送制度の見直しに向け、政府の地方分権改革推進本部・地域交通部会のメンバーやNPOボランティア、タクシー、バス、労働団体などの関係者を交えた新しい検討会を立ち上げる方針を固めた。地方分権本部が決定した事務・規制権限を国から「希望する市町村」に移すための「道路運送法」改正案の策定作業に入る。法人格や旅客の範囲、対価など運送団体の登録要件・手続きの全国的な緩和・弾力化措置も具体化させる。初会合は10月8日の予定。座長に分権地交部会長を務めた早稲田大学の後藤春彦創造理工学部長が内定した。
 自家用有償運送の自治体への移譲方針は、地方分権本部が傘下の有職者会議・地交部会による8月29日の取りまとめを受け、今月13日に正式決定。今後、所管する国交省が道運法本体や省令・通達の改正など制度設計に乗り出す。検討会では年内に道運法改正案のタタキ台となる中間まとめをし、来年3月に同法案を含む「地方分権改革一括法案」が閣議決定、国会に提出される流れとなっている。
 国交省の新検討組織の名称は「自家用有償運送の事務・権限の地方公共団体への移譲等のあり方に関する検討会」。委員の人選は調整中で、学識者は分権本部地交部会メンバーの後藤氏、一橋大学大学院の山内弘隆教授、名古屋大学大学院の加藤博和准教授ら6人全員が入る予定。厚生労働省も加わる。
 運送側はNPO全国移動サービスネットワーク、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国福祉輸送サービス協会、日本バス協会、交運労協、全日交からそれぞれ選ばれ、全国移動ネットの河崎民子副理事長(かながわ福祉移動サービスネットワーク)、全福協の漠二美会長(大分シティタクシー)らの見込み。
 有償運送の移譲先は希望する市町村が基本で、希望しない、または執行できない市町村には都道府県が受け皿となって補完する。道運法の改正ではこうした枠組みを規定し、自治体が登録事務とともに担う安全監査や、地方運輸局・運輸支局との連携などが検討会の論点になりそうだ。
登録要件の弾力化も
 省令・通達の見直しでは、分権地交部会の報告書でうたわれた@法人格のある団体に限られている実施主体を弾力化、A運送の種別ごとに限定されている旅客の範囲を拡大、B運送対価は実費の範囲内で、営利目的とは認められない妥当な範囲内なら設定可能な旨の周知を徹底、C合意形成の手続きや運用を改善、D登録更新で書類の省略など事務手続きを簡素化――などがテーマに据えられる。
 市町村が主宰する運営協議会が独自に定めている「ローカルルール」(上乗せ基準)のうち、過去の検討組織でも取り上げてきた不合理なケースの是正をめぐり、あらためて議論する見通しだ。



《地方分権有識者会で了承》自治体に権限移譲へ/自家用有償運送、「登録までの期間短縮も」』(東京交通新聞2013.9.2)
「政府の地方分権改革推進本部・有識者会議の第4回会合が8月29日開かれ、NPOボランティアなど自家用有償旅客運送の事務・規制権限を国から自治体に移す方法が事実上決まった。専属的に調査・審議していた「地域交通部会」の報告書を了承し、9月中に本部決定、年末の閣議決定を経て、来年3月に「道路運送法」改正案を含む「地方分権改革一括法案」を国会に提出するスケジュールが示された。
 有償運送の移譲先は「希望する市町村」が基本。希望しない、または執行できない市町村には都道府県が受け皿となって補完する仕組みとした。自治体側の体制整備を重視し、現在、所管する国土交通省が知見・ノウハウを継承し、支援する。運営協議会の主宰から、運送団体の登録・監査に至る一連の業務が、市町村で完結する姿になる。
 移譲の有無とは別に、国交省法人格旅客の範囲対価などの登録要件・手続きを全国的に弾力化する。同省と各自治体は、運営協が独自に定めている不合理な「ローカルルール(上乗せ基準)」の是正に引き続き取り組む。
 この日の会合で後藤春彦地交部会長は「地域の実情に応じた、創意工夫による移動手段が確保できる。関係者の合意から登録までにかかる期間の短縮も期待できる」と、移譲の効果を見通した。新藤義孝総務相・分権担当相は「検討項目を一挙に集約し、スピードを上げて実現させたい。部会を設けた雇用と地域交通は特に大事だ。分権の成果は関係者にとどまらず一般の国民に実感してもらい、未来につなげることが問われる」との見解を示した。
『地方分権改革有識者会議・地域交通部会の報告書』自家用車有償旅客運送関係=概要、8月29日)
5.見直しの方向性
 人口減少や高齢化が進む中、バスやタクシーのサービスが十分に提供されない地域で、高齢者や障害者などの移動手段の確保は住民の生活を維持する上で不可欠。地域の活性化にも重要。自治体は福祉、教育、地域交通など暮らし全般に責任を負う立場にあり、これまで以上に移動手段の確保に取り組むことが求められている自治体やNPO・地域団体などが担い手となる自家用有償運送の果たす役割はますます重要
(1)事務・権限の移譲
@移譲先 有償運送は、主として市町村単位のエリアで住民生活を支える。市町村は住民の居住・活動に関する情報や地域交通のニーズを最も把握し、住民の要望に直接責任を担う立場。移動手段確保に取り組む意欲を持ち、関係者の合意形成を図るなどの能力を備え、安全で安定的な運行を確保する責任と覚悟が求められる。
 現在、国(国土交通省)が行っている有償運送に関する事務・権限の担い手として市町村がふさわしいと考えられ、移譲先は希望する市町村を基本とすべき。一方、財政状況を含め執行体制上の懸念などから移譲を希望しない市町村が出てくることも考えられ、まずは移譲を受けやすくする環境整備を国交省が行い、移譲を促進することが必要。
 移譲を希望しない市町村の区域については、都道府県が意欲・能力を持つ場合、市町村にかわって役割を果たすことが考えられる。希望する都道府県にも移譲できるようにすべき。当初、移譲を受けなかった市町村が、その後、希望するに至った場合、当該市町村にも移譲できるようにすべき。
 事務・権限の移譲で、運営協議会の主宰から登録・安全確保に至る一連の役割が自治体で完結し、登録までの手続きの迅速化が図られ、それぞれの地域の実情に応じた創意工夫による移動手段の確保につながることが期待される。
A移譲先の体制整備 移譲先で輸送の安全を確保し、利用者保護を図るための事務・権限を適切に執行する体制を整備することが不可欠。国交省はこれまで蓄積した専門的な知見やノウハウ、安全確保を担う責任に対する考え方なども含めて的確に継承するために必要な措置を講じ、移譲後も適切に執行されるよう、移譲先の自治体との連携を図り、支援すべき。
 国交省は有償運送の実施と登録・監査などの事務が同一の自治体に帰属する場合でも、適正な登録・監査などが実施されるよう必要な措置を検討すべき。
(2)地域実情に応じた運送の実現に向けた措置
@国交省は、(@)これまで法人格のある団体に限られていた実施主体を弾力化する、(A)運送の種別ごとに限定されていた旅客の範囲を拡大する、(B)運送対価は実費の範囲内で、営利目的とは認められない妥当な範囲内なら設定可能な旨の周知を徹底する、(C)合意形成の手続きや運用を改善する、(D)登録更新で書類の省略など事務手続きを簡素化するなど、意欲ある自治体が地域の実情に応じた運送を実現できるよう必要な措置を検討すべき。
A国交省は(1)と(2)@の制度改正に当たって、趣旨・内容が地域交通を担う現場に至るまで十分浸透するよう周知を徹底し自治体移動手段を確保していく観点から制度の理解を深め、十分に生かすよう積極的に取り組むべき。
B自治体は、これまで運営協議会で定められてきた不合理な「ローカルルール」の是正に向け、引き続き必要な措置を講ずるべき国交省もその取り組みが促進されるよう積極的に働きかけていくべき。」



《大阪市旧赤バス代替運行》次年度民営化方針踏まえ対応/じわり浸透 生活支える』(東京交通新聞2013.8.12)
「大阪市の各区が今年4月からバス・タクシー事業者などに業務委託する形で旧赤バス路線の代替運行を始めたが、高齢者らの生活交通として相応の役割を果たしている。利用者数は漸増傾向にあり、複数区で運行便数や乗降場所を増やす動きも出ている。各区の代替路線は旧赤バス路線のエリアを縮小・効率化した形や利用対象者を高齢・身障者に絞った「福祉車両」形態などさまざま。各区は次年度以降の運行態様について、大阪市の民営化移行方針を踏まえ対応する。
 大阪市の赤バス26系統が3月末で廃止となり、何らかの代替運行方策を講じたのは大阪市24区のうち15区。このうちバス、タクシー事業者に1年間限定で運行業務を委託したのは11区【表参照】。都島、港、西淀川、旭、城東、淀川の6区は旧赤バス路線の利用状況を踏まえ、利用対象者を限定せず運行ルートを策定、減便運行している。
 旭区では、北港観光バスが「あさひあったかバス」を守口車庫前〜地下鉄太子橋今市間で運行。旧赤バス路線と同様の運賃収受方式を採用したが、終日16便運行し、1日平均で200人超えの利用がある。区では「これまでの30分間隔が50分に伸びたが、路線が確保されたので利用者は喜んでいる」(総務課)と話す。
 港区では、日本交通が弁天町バスターミナルを起点に「ループバス」を巡回運行。赤バスと同じ運賃100円で終日9便運行し、1日平均200人強の利用がある。「旧赤バス路線では1日平均360人利用があった。ルートの一部を廃止し減便したが、応分の利用がある」(総務課区政統括グループ)と語る。
 他方、東住吉区では日本城タクシーが助成金を受けずに自主運行する形で参入。地下鉄西田辺駅〜区役所〜瓜破西間を午前6時30分〜午後23時台まで運行。月〜土は1時間に3〜5便、日祝日は7時〜午後10時台に3便走る。8月段階の利用者数は1日当たり150〜200人と採算ベースには届いていない。
 同社では「まだ当初見込みの4分1ほどだが、徐々に浸透してきている。区と相談し運行ルートの見直しなど検討したい。商店街組合の支援もある。次年度以降も継続するつもりだ」(坂本篤紀取締役部長)と意欲を示す。
ふれ愛交通、国際興業「福祉バス」を運行
 「福祉車両」の態様では平野区が、敬老パス保持者(70歳以上)らを対象に事前予約のマンド乗合「ひらちゃん号」を区役所〜地下鉄南巽ルートで平日日中に運行。ふれ愛交通(道野隆代表)が業務受託し福祉仕様のジャンボタクで対応、運賃は無料で車いす使用者1人を含む8人が乗車できる。
 登録者は440人(6月末現在)で、利用人員は7月段階で「1日平均で7人は超えている」(市場勝専任乗務員)状況。乗降が多いのは区役所、老人福祉センターなど。当初14ヵ所だった乗降場所は7月から4ヵ所増え18ヵ所になった。
 平野区では8月中に利用者アンケートを行い、さらなる改善策を検討する。「乗り継ぎが便利なJR平野駅への乗降場所確保を要望する声は多いがハードルが高い。1年限定の運行であり、次年度の予算措置は講じていない」(政策推進課)と話す。
 国際興業大阪(迫田謙典代表)は、東淀川、淀川、阿倍野の3区で業務受託。東淀川では地域福祉バス「「ゆうあい号」を終日1日10便連行。高齢者や妊婦など交通弱者が対象で運賃は無料、区役所を起点に目安となる「乗降地」を20ヵ所設けた。旧赤バス路線に比べ運行便数は減ったが、「乗り心地はいい」など評判は良いようだ。区では8月に利用者アンケートを実施、土・日運行の是非など乗車効率の改善を検討する。
 淀川区では「乗合タクシー」を平日に1日5便連行。運賃は200円で、対象者は絞っていない。利用者の要望や収益改善のため増便を計画しており「8月中にも2便増やし7便態勢にしたい」(政策企画課)と話している。
 阿倍野区では70歳以上の高齢者、要介護認定者らを対象に「福祉巡回車両」を無料運行。敬老パス保持者の利用が9割を占める。
 次年度以降の運行態勢に関しては、各区とも一様に「大阪市の民営化移行方針を踏まえ対応するが、現段階では何も決まっていない」と話している。

旧赤パス代替運行各区の対応
(東京交通新聞まとめ、8月1日現在)
 区 名  予算額 運行会社 利用現況(1日平均)
 都 島  1745 京阪バス 170人
1042 日本交通 200人
西淀川 1000 千里山バス 150〜170人
淀 川 584  国際興業大阪  80人
東淀川 1945  国際興業大阪  60〜80人
1167 北港観光バス 200人
城 東 299 エムオーティ 50人弱
鶴 見 700 MK観光バス 60〜70人
阿倍野 585  国際興業大阪  約40人
東住吉 民間参入 日本城タク 150〜200人
平 野 1027 ふれ愛交通 7〜8人
西 成 293 東豊観光 16人
※予算額の数字は万円。大阪市24区のうち11区が赤バス路線廃止に伴い運行業務を委託。平野区はデマンド乗合。東住吉区は民間参入。



《自家用有償運送の権限移譲》希望しない市町村には都道府県が補完も 全国的に登録要件弾力化/地方分権部会が了承』(東京交通新聞2013.7.29)
「政府の地方分権改革推進本部・有識者会議の地方交通部会(部会長:後藤春彦・早稲田大学創造理工学部長)は26日、第2回会合を開き、NPOボランティアなど自家用車有償旅客運送の国の事務・規制権限の自治体へ移譲方法をめぐり論議、「希望する市町村」に移すことを前提に、希望しない、または執行できない市町村には、都道府県が受け皿となって補完する仕組みを新たに決めた。法人格旅客の範囲など運送団体の登録要件を全国的に緩和・弾力化する方針も申し合わせた
  地交部会はこの日、報告事案を了承し、審議を終えた。来月予定の上部の有識者会議に提出、公表される。その後、本部決定し、地方分権改革一括法案道路運送法改正案などの作成に入り、提出は来年の通常国会となる方向。
 有償運送の事務・権限の移譲先は「市町村が住民の居住・活動や地域交通のニーズを把握している。意欲、能力と安全で安定的な運行が求められる」との認識の下、「希望する市町村」を基本に据えた。その上で、執行体制上の懸念から市町村が移譲を希望しない場合には、都道府県が代わって役割を果たすよう「希望する都道府県」に移すことも可能とする
 移譲先の体制整備に向け、所管する国土交通省に対し、安全の確保や利用者保護などに関する専門的な知見・ノウハウを的確に承継し、移譲後も連携・支援することを求める。移譲の有無とは別に、地域の実情に応じた運送サービスを実現させる考え方を重視。運送団体の法人格など各種の要件・手続きを弾力化する
◇           ◇           ◇           ◇
 会合終了後、会見した後藤部会長は報告書案について「移譲のメリットが分かりにくいとの指摘が出され、具体的にもっと示す必要がある。自治体が地域の足の確保を総合的に考えることは重要で、工夫が求められる」と述べた。タクシーとの関係には「それぞれの地域で事情が異なる。報告書で特に記載は用意していない」とした。3日の初会合で一斉ヒアリングした日本バス協会、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国福祉輸送サービス協会、NPO全国移動サービスネットワークなどの意見を反映する意向を示した。
 登録要件の弾力化措置のうち、運送の対価に関し、同部会長は「実費の範囲内で、営利目的でない妥当な範囲内なら設定可能という旨の周知を徹底させるとかある」と例示した。」



『《関西STS》移動制約者の外出支援/福祉・交通の統合主張』(東京交通新聞2013.3.25)
「関西STS連絡会(伊良原淳也代表)が16日、北区の大学コンソーシアム大阪で移動制約者の問題を多角的に捉える「2013年新春セミナー」を開催。関係者約50人が出席した=写真。
 大阪大学の猪井博登助教がパーソントリップ調査からみた移動制約者の外出状況を解説したほか、関連団体が取り組み状況や課題を報告した。猪井氏は「移動制約者の外出支援は交通施策か、福祉施策か」と問題提起したうえで、10年度に国交省などが実施した「第5回近畿圏パーソントリップ調査」を独自に分析した結果を説明、福祉・交通の統合を主張した。
 調査では「公共交通機関で利用できない」と回答した人が少なくとも全体の0.7%近く、「大阪府内では5、6万人にのぼる。1有償団体で300人輸送しなければならない」と数値を重視。高齢者・障害者手帳所持者・要介護者それぞれに共通し、「外出する人としない人の差異が大きい。支援が漏れ落ちて外出できない人が増えていく」と指摘した。
 東日本大震災後、宮城県石巻市で災害移動支援を行う「Rera(レラ)」代表の村島弘子さんが報告し、「連携」の重要性を強調した。関西STSの田村幸二氏は「大阪市福祉有償運送運営協」に提出した要望書(昨年6月)の回答がきたことを報告した。
 要望内容は、▽迎車・回送料金▽セダン車の使用▽車両写真の提出不要▽適性検査表・運転記録証明書提出の見直し―など。回答で大阪市は、迎車料金・セダン車の利用は協議会の承認によるとしたが、他は安全運行の確保や管理面から認めない旨を示した。」



『市川市、地域福祉計画に移動支援策盛り込む』(東京交通新聞2013.2.11)
千葉県市川市は、地域福祉施策を総合的に推進する社会福祉法107条に基づく第3期地域福祉計画(2013〜17年度)に、新規に移動の自由を確保する施策を盛り込む方針を固めた。市長決裁を経て3月に公表する。同市の福祉有償運営協議会が策定した移動ビジョンで、地域福祉計画に移動困難者の支援策をうたうよう提言していた。同計画に具体的な移動支援策が明記されるのは、全国的に見ても少ないケースだ。
 2013年度から5ヵ年の市川市地域福祉計画は、1月29日の庁議で決定。5日の運営協で報告された。4つの基本目標19の施策からなり、15番目の施策に「移動の自由の確保」が初めて盛られた。この中で有償運送の支援と相談指導を明記。毎年度1団体の有償運送事業者の支援を数値目標に掲げる一方、重度障害者のタクシー利用を半額補助するタクシー利用券交付事業ガイドヘルパーによる移動支援事業の推進をうたった。
 それぞれの施策で、住民の個々が自立のため努力する「自助」、地域が協力し合う「共助」、行政が責任を持つ「公助」の3つの役割分担を明記している。」