U.関西地区におけるSTS実施団体の概況

 全国10箇所のネットワークが設立される中、関西STサービスを実施する団体がまず互いの存在を認識し将来的に連携・協力していくことを目標として、関西STS連絡会に関心を持つ団体の現況と連絡会への期待や考え方を把握するためのアンケート調査を行った。どういった方向に進んでいけばSTサービス全体の発展につながるのかを検討し、関西STS連絡会の今後の方向を見つけていく大切なアンケートの内容を認識することが大切です。


1.アンケート調査の概要

 今回の調査は、関西STS連絡会に関心を持つ、関西2府4県(大阪府、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)を活動の中心とする、STサービス実施団体を対象として、郵送と一部手渡しにより配布し、郵送により回収を行った。調査期間は2001年11月から2002年1月、回収数及び有効サンプル数は28です。
 アンケートの設問項目を表1に、アンケートに協力いただいた団体を表2に示す。
表1 アンケート設問項目
設問項目
団体属性 活動開始時期、活動に占めるSTサービス事業の割合、スタッフ数、スタッフ属性、車両数
運行状況 STサービス事業の満足度、STサービス事業の展開希望、STサービス事業の問題点
連絡会への 意識 連絡会に関心を持ったきっかけ、連絡会への期待、連絡会はどうあるべきか
その他 STサービスはどうあるべきか
表2 アンケート協力団体
県・市 市・区 団体名
大阪市 平野区 ダイワ
大阪障害者労働センター
はっぴいすまいる
住吉区 ひまわり会
ライフネットワーク
東成区 楽々移動サービス
旭区 フェリスモンテ
浪速区 PartyParty
大阪府 堺市 ナイスネット
せかんど
八尾市 輪互夢
自立生活センターやお
豊中市 障害者自立支援センター
岸和田市 ふれあい泉
東大阪市 自立支援センター
ぱあとなー
富田林市 ワーカーズ・コレクティブ
はんど
河内長野市 河内長野たすけあい
茨木市 アクティブネットワーク
泉南市 泉南くらしのたすけあい
滋賀県 大津市 ふれあい大津
今日も1日がんばった本舗
草津市 滋賀自立生活センター
兵庫県 神戸市 コープともしび
ボランティア振興財団
宝塚市 カーボランティアグループ
尼崎市 在宅福祉支援グループ
コスモス
京都府 京都市 京都
運転ボランティア友の会
奈良県 奈良市 地域福祉互助会
和歌山県 和歌山市 和歌山
ケアマネージャーの会


2.STサービス事業の活動開始時期

 図1に、STサービス事業を開始した時期と団体数について示す。その他の回答については、1990年が1団体、1981年が1団体、1970年代が1団体あった。
 活動歴で見ると、3年までが47%、5年までが70%、7年までとすると87%であり、活動歴が浅い団体が大半を占める。




3.活動全体に占めるSTサービス事業の割合

 図2に、団体の活動全体に占めるSTサービス事業割合を示す。
 STSのみを行う団体と、活動全体の7割以上がSTサービス事業である団体を合わせて32%、STサービス事業が3割未満の団体が53%であり、中間があまりない。このことから、STサービス事業が主体である団体と、STサービス事業の優先度が低い団体の2つの層に分かれているといえる。




4.スタッフ数とその属性

 図3に各団体の役割別のスタッフの人数を、図4にスタッフの属性を示す。
 運転手は運転のみを行い、事務員は運転を行わないスタッフとし、両方を行うスタッフは兼業と表示した。運転手0人という団体は、STサービス事業を行っていないということではなく、兼業スタッフが行っているということである。
 運転手と事務員について比較すると、スタッフ数で、事務員は8割の団体が0人または1人なのに対し、運転手は8割の団体が2人以上と回答しており、10人以上いる団体も多い。これをスタッフの属性別で見ると、ボランティアの事務員は皆無なのに対し、運転手については7割がボランティアであることから、常勤・非常勤スタッフが、ボランティアスタッフを束ねているという形が見える。






5.車両の状況

 図5に所有者別の車両数を、図6にリフト付き車両の割合を示す。
 全リフト付車両数をみると、リフト車を持たない団体があることが注目される。交通制約者のうち、視覚障害者や立ち上がることが出来る車椅子利用者に対しては、必ずしもリフト付き車両が必要条件とはならない。また、リフト車数が1台または2台と回答した団体で全体の7割を占め、大規模に行っている団体は少数派である。






6.STサービス事業の満足度

 図7にSTサービス事業の満足度を示す。
 大変満足との回答はなかった。満足とやや満足を合わせて約半数を占めるが、その理由として、「STサービスの置かれた厳しい状況の中で健闘している」との回答が多く見られ、サービスの供給体制には満足しているものの、サービスの供給水準には必ずしも満足しているとはいえず、現状をよりよくしていこうとの意志が伺える。




7.STサービス事業の展開希望

 図8に、今後STサービス事業をどのように展開していきたいかについての回答を示す。
 規模を縮小したいとの回答は0であった。現状維持との回答の理由として、「拡大したいが、送迎事業が赤字であるため現状維持が精一杯」との回答がいくつかみられた。また、「病院送迎をやっているが、市町村の理解が得られないのであれば縮小したい」との回答もあり、気持ちとしては拡大希望でも、厳しい環境から現状維持との回答が多く見られた。
 STサービス事業の満足度との関係では、現状に満足だが、さらに事業を拡大したいとの回答が多くられた。




8.活動の問題点

 図9にSTサービス事業の行う上での問題点を示す。各項目について複数回答である。
 問題なしと回答した団体はなかった。運転手、活動資金が不足しているとの回答が多かった。運転手不足に対して、車両不足はあまり高い数値でない。その理由として、リフト車があるのにあまり活用されていないとの回答があった。特に、STサービスが活動の主体ではない団体で、リフト車を施設送迎に主に使っている場合、施設が休みの日や送迎以外の時間帯は車両が空いているとの回答が見られた。
 法令保護不足に関しては、車いす利用者向けの駐車許可証の発行が繁雑であるといった回答や、現状が、法令上いわゆる「白タク」行為となることへの不安といった回答が見られた。




9.連絡会に関心を持ったきっかけ

 図10に関西STS連絡会に関心を持ったきっかけについて示す。各項目について複数回答である。
 連携の必要性を感じていたとの回答に対し、単独での限界との回答は少なく、前述のような、現状に満足だが、更なる向上を目指すとの意向と考えられる。
 制度や知識については、特に活動歴の浅い団体が回答し、その理由として、とりあえず車を手に入れたが、活動については暗中模索であるとの理由が見られた。
 その他の回答として、送迎サービス関連の法律に関する国の動きを知りたいとの回答があった。




10.連絡会への期待

 図11に、関西STS連絡会への期待を項目別に分類したものを示す。連絡会によって、どういったことが出来るようになるかについての設問に対し、大変期待するを+2、期待するを+1、期待しないを−1、まったく期待しないを−2として点数化した。そして、設問を、資金、研修、社会的な位置付け、人、車両、情報の6つの項目に分類し、各項目について、平均からの距離を示した。
 情報と研修に期待が集まった。図12、図13に、高い数値となった情報及び研修について、設問ごとの回答を示す。
 注目は、低い値となった資金及び車両である。現状の問題として、資金や車両の不足が問題となっていることを前述したが、それにもかかわらず、連絡会への期待は集まっていない。
 これには2つの側面があると考えられ、1つは連絡会はあてに出来ないだろうということ、もう1つは団体の自主性への懸念である。前者については、主に活動歴が長い団体が自分たちの活動経験から、集まったところで解決できるだけの力を連絡会は持たないだろうとの思いがあるものと推測される。後者については、主に活動歴が浅い団体や小規模な団体が、連絡会に主導権を奪われ、現在の自主的活動から連絡会の事業の下請け団体化への危惧があるものと推測される。
 また、資金及び車両については連絡会にではなく、行政からの支援に期待していると推測される。




 情報への期待であるが、幅広い情報が得られるとの項目に期待が集まった。STサービスは、その位置付けが不明確なこともあり、STサービスとしてまとめた形での情報の発信者が非常に少ない。そのため、国会や国土交通省、厚生労働省、都道府県や市町村、車両メーカー等多岐に渡るSTサービス関連分野に各々アクセスする必要があり、幅広く情報が得られるであろう連絡会への期待が集まっているものと思われる。






 研修への期待であるが、講演会や研修会、運転者に対する研修など、各団体が単独で開催するよりも、集まって開催することに利があると思われる項目に期待が集まり、順当な結果と思われる。
 また、小規模な団体では負担が大きいと思めれる、専門家や行政当局の担当者、議員などといった著名人を招聘することには否定的な結果が出た。


 結果について総括すると、団体間の考え方や経営資源、問題としていることなどが非常に多岐に渡っていることが明らかとなり、これらの団体がまとまることには大変な困難が予想されます。
 しかしながら、捉え方に差はあるものの、全ての団体が、STサービス事業を向上させていこうとの意識を共通して持っており、だからこそ連絡会へも関心を持ったのであろうと思われます。
 今後の展開としては、各団体の意向に配慮する必要もあるが、最も避けるべきことは活動の停滞であり、このSTサービス事業を向上させようとの意識を軸に、連絡会がすべきことに優先順位をつける作業を急ぎ、優先順位の高いものから活動を進めていくことが必要です。