1.研修の目的
移動・送迎サービスは、障がいのある人や高齢者、病弱者など、地域社会でのバリア(壁)によって自由な移動を制約されている人びとの外出などの支援を行う活動です。私たちが日常生活をおくっている地域には、移動・送迎サービスを必要とする人がたくさんいるにもかかわらず、日本では移動・送迎サービスは圧倒的に不足しており、移動・送迎サービスがない地域も多いというのが現状です。長い間、各地域においては民間の非営利団体(ボランティアグループやNPO法人(特定非営利活動法人)、社会福祉協議会など)の手で移動・送迎サービスが取り組まれてきましたが、最近はますますそのニーズがふくらんできています。
移動・送迎サービスは、車の運転だけではなく乗降車前後の介助を伴う大切な活動です。介助も、運転と同様に正しい知識と確かな技術を習得していれば、安全で安心な介助を行うことができます。運転協力者になろうという意欲に加え、利用者の安全や安心への配慮を意識的に行うことによって、移動・送迎サービスに適した運転をおこなうことができます。移動・送迎サービスにたずさわる人にとっても、もちろんそれらのサービスを必要としている利用者にとっても、安全と安心は欠かせないことは言うまでもありません。
運転協力者研修は、安全で安心して利用できる移動・送迎サービスがより多く提供されることを目的に、運転協力者として活動を希望する人、および活動している人が求められる正しい知識と、運転および介助などの確かな技術を習得し、運転協力者として活躍されることをお手伝いするものです。
2.研修の進め方
本テキストでは、2006年10月1日に施行された「改正道路運送法」の「自家用有償旅客運送自動車の運転者に対する講習の認定要領について」(第186号通達)で示された内容の基本的な項目を、解りやすく整理しています。
運転協力者研修は、受講する人の経験、利用者のニーズなどによって、さまざまな広がりと深まりが求められます。そのために研修後の参加者の意見交流や、研修をくり返して行うことが大切です。また、それぞれの団体・グループが実際に提供している介助の範囲に照らした研修方法の工夫や、必要に応じて的をしぼった研修を深めるためのいくつかの「副読本」も準備していますので、併用されることをおすすめします。