ベルギー旅行記
= 目と舌を楽しむ
土代 武
4〜5月の連休にオーストリア航空、ウイーン経由で
ベルギーに行ってきました。
去年
同じ時期にオランダに行ったので、この際お隣のベルギーにも行こうという軽い気
持ちもありましたが、しかしベルギーにはすばらしい絵画(ボス、ブリューゲル、ルーベンス
、
マグリット 等)もあるし、食べ物もうまいと聞いていますから食いしん坊の私としては大
変楽しみな旅行です。そして何よりも酒好きの人にはこたえられないものがあります。何
しろベルギーには400種類ものビールがあり、ビアハウスやレストランでビールを頼む
とその銘柄ごとにそれぞれカップは決まっているのです。甘口あり、辛口あり、色も
ピ
ンク、白、黒、度数もいろいろ、フルーツ風味のものまであります。
私たちは5人で行っ
たので5種類のビールを注文し、互いに飲み比べるなどしてかなり
の種類のビールを味わうことができました。
こんなにいろいろな味を楽しめるのはうらやましい限りです。
ところで今回まわったのはブリュッセル、アントワープ、ブリュージュ、オステンド、
ゲントです。これはベルギー北部フランドル地方を中心とした地域です。ベルギーは日本
人には余りなじみのない国のようですが、私たちの感覚からすると不思議なことがいっぱ
いあります。まずベルギー語というのはありません。フランドル地方ではオランダ語の方
言といえるフラマン語をしゃべり、南部のワロン地方ではフランス語系のワロン語をしゃ
べっています。そして長年の「言語戦争」の結果、最近になって国内を二分する言語線がひ
かれ、そこを境に完全に公用語が違う。つまり道路標識からレストランのメニューまでそ
の標記が違うのです。ただしブリュッセルだけは首都ということもあって両言語が併記さ
れています。そしてそれぞれの言語圏が政府を持ち、外交や軍事以外はそれぞれが決めて
いく「連邦国家」なのです。「単一民族国家」(実はそうではないのですが)という考えが強い
日本では想像しにくいことかも知れませんが、でも世界にはこのような連邦国家は決して
珍しくはありません。
アントワープには「フランダースの犬」で有名なルーベンスの絵がノートルダム大聖堂に
あります。これは宗教画ですから教会で現に教化の手段として使われているのですが、キ
リスト昇架、キリスト降架のセットになった絵はスケールも大きく、描写も非常にダイナ
ミックで見ごたえがあります。これが無料で見られるのですから感激です。絵の前の祭壇
では子供たちが劇の練習をしていましたが、実にいい環境で教育されているなと感心しま
した。
ブリュージュは運河に囲まれた中世そのままの町ですが、観光シーズンにはいっていた
からか観光案内所でホテルが見つからず、苦労してやっと民宿を見つけました。でもこれ
が大変落ち着いた町並みにあり、古都の雰囲気をたっぷり味わうことができて3連泊でも
足りないほどでした。ここは町全体が博物館といってもいいのですが、特に聖母マリア教
会にあるミケランジェロの聖母子像はマリアの静かな表情が印象的な作品です。
ゲントは聖バーフ大聖堂にあるヴァン・エイクの「神秘の子羊」が印象に残ります。ルネ
ッサンス初期の作品としては非常に鮮やかに色彩が残り、また人物描写も中世の堅苦しさ
から完全に抜け出たものがあります。
今あげたのは教会の中の美術品ですがこれはもちろんベルギー美術の一部にしか過ぎま
せん。ブリュッセルの王立美術館は1日かけても見切れないほどですし、各地の美術館も
ルネッサンスから近代の絵画がびっしり展示され、しかも内容が充実して見飽きることが
ありません。特に私個人としてはボスとブリューゲルの生の絵が見られただけでもベルギ
ーに 行ったかいがあったと思います。
次は食事です。食べ物も言語と同じくやはり多様な、各地それぞれの味があるようで
す。たまたま季節がよかったからか、冬の味ムール貝、春の味白アスパラガスを両方食べ
られましたし、本場のワッフル、そしてチョコレートもたんのうしました。昨年行ったオ
ランダに比べるとこちらのほうがかなり洗練した味が多かったように思います。それでい
て比較的手ごろな価格でベルギーの味を満喫できました。
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