『 同 友 会 だ よ り 』 (vol.4 2012.8.12) 8月に入り暑さもいちだんと厳しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 米軍によるオスプレイの日本国内への搬入、原発調査の不透明さ、いじめ問題や公務員による相次ぐ不祥事、長引く円高、政局の混迷など、問題が山積み状態です。韓国内でもまたまた政治家がらみの汚職やら、北朝鮮では粛清などというきな臭い言葉も飛び交い、まわりはなかなか透明感がないですね。この暑さの中、少しは涼しげな話題がほしいものですが、在日政治犯の再審に関し、一歩踏み込んだ進展がありました。 去る7月23日、ソウル中央地方法院において、70年代に延世大学留学中に連行、10年間服役された東京在住の具末謨(ク・マルモ)氏に無罪判決が言い渡されました。裁判部は判決の中で、具氏の北朝鮮への入北の事実を認めながら、スパイ罪は成立しないという画期的な判断を示しました。具氏は、「40年前には考えられない公正な裁判というものはこういうものかと身震いがするほどだ。感無量だ。」と話し、「統一運動、南北和合、在日同胞の権益の拡大に尽力したい」と語りました。 同日の午後2時から4時間にわたって行われた康宗憲氏の公判では、検事側の証人として出廷したキム・ヒョンジャン(62)氏に対し、康氏の担当弁護士であるシム・ジェファン弁護士の反対尋問がありました。キム・ヒョンジャン氏は、1982年の釜山アメリカ文化院放火事件の主犯として死刑判決を受け、1980年代に同じ刑務所で康氏と生活を共にした過去があります。彼は去る5月、インターネットを通じた「忘れられない友、宗憲へ」と題した公開書簡の中で、「獄中で康氏から『北で集中教育を受けた』と話すのを聞いたことがある。」と発言しています。しかしながらキム氏のこの発言は、彼が過去に刑務所内での言動が仲間からの不審を買ったり、運動圏内部を公安当局に密告したことなどをふまえ、表向きは康氏が統合進歩党比例18番で国会議員に立候補したことに対するやっかみからの発言と捉えるむきが強く、康氏の弁護人も同様の趣旨で尋問をしています。ただ一方で、康氏個人の裁判が政争に巻き込まれることのないよう願うばかりです。次回8月20日の公判での展開が気になるところです。一方、30日には広島在住の趙一之氏の高裁での公判があります。 7月26日には、東京在住で、80年代に延世大学大学院留学中に連行された東京在住の許哲中氏に対し、再審開始決定がなされました。氏は昨年2月28日に再審申請をし、1年半を経て再審の運びとなりました。氏に対する無罪判決を期待します。 また、翌27日には大阪在住で7年2ヶ月あまり投獄された高秉澤(コ・ビョンテク)氏に、再審開始決定がなされました。氏が再審請求をされてから1年2ヶ月の期間を要しましたが、今後二ヶ月以内に審理が始まるものと思われます。この消息は、我々にとってうれしいばかりでなく、現在再審請求をしている仲間にも心強い材料の一つになるでしょう。ただ、パーキンソン病で苦労されている氏の出廷には、困難が予想されます。これに対し、何らかの考慮と対策が必要かと思われます。 去る8月5日に同友会は集まりを持ちました。同友会の仲間や支援者の方々などを交え、在日再審者の公判報告や今後の課題などについて話し合いがもたれました。今後の課題については、以前から話し合われていた「在留資格の原状回復」にどう取り組んでいくかについて重点が置かれました。6月12日の衆院予算委員会での民主党の稲見哲夫衆院議員(総務政務官)が滝法務大臣に対して質問した「在日政治犯の在留資格の原状回復問題」や7月2日に金東輝・尹正憲・宋貞智氏らが渡韓し、韓国外交通商省の東北アジア1課・崔鳳圭(チェ・ボンギュ)課長と面談し、「在日政治犯の在留資格の原状回復」について日本政府への韓国政府からの働きかけの要請を行ったこと、27日には、田中宏先生、金元重氏、金整司氏が議員会館にて稲見議員と、滝実法務大臣からの回答に対する対応などについて面談したこと踏まえ、東京の「NPO法人在日韓国人良心囚の再審無罪と原状回復を勝ちとる会(代表・金整司)」との合同連絡会議を大阪で開催することで、広く連携していくということについて合意を見ました。 韓国内では最近になって、再審開始決定されたにもかかわらず再審裁判の公判で棄却されるという前代未聞の判決がありました。我々にとっては冷や水を浴びせられるような判決で、これから裁判を闘う仲間にとっても予断が許せません。 これからが夏本番です。暑いソウルで我々の仲間たちも戦ってきます。みなさまも健康に留意され、あわせて温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。 在日韓国良心囚同友会・一同
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