《第17回 東大阪国際交流フェスティバル》
さわやかな風と子どもたちの歓声がお祭りをつつんだ
― 国際交流フェスティバルに7,000人の市民が集う ―
東大阪国際交流フェスティバル実行委員会 西山 健一郎
 

 東大阪国際交流フェスティバルも17回目を迎え、市民約7,000人の参加を得て舞台プログラム25グループ、出店42団体と盛況ななかで開催することができました。今回のレポートはその中からユニークな取組み、新しい取組みを紹介します。

《届け ちっちゃなメッセージ》
「キャーッ可愛い あんなにちっちゃなサイズの民族衣装」「赤青緑と、とってもカラフル よーく見ると、どれもデザインが個性的だね」「ヘーェ、布地も厚くて、しっかりした織り目だ」「思い切りみんな、はしゃぎ回ってうれしそう 胸を張って、大威張りだね
 アフリカン・ミュージックをBGMに、アフリカの民族衣装を身にまとい、おしゃまなポーズをとる14人のアフリカンキッズ。
『アフリカン・カルチャー・スペシャル』と題したキッズのファッションショーが、フェスティバルの舞台狭しと繰り広げられました。今回が初めての企画です。西アフリカにあるシエラレオネ出身のメッド・ロマシィさんは「自分の子どもも、このフェスティバルが大好き。もっともっとアフリカの子どもたちに楽しんでほしかったから」と、その企画の意図を話してくれました。最初はちょっと恥ずかしそうな子も、やがてプロ並みのモデルのように堂々とウォーキングしていきます。ありがとう、メッドさん。とってもいい企画ですね。
 そんなファッションショーを横目に、改めて上演される25グループの舞台プログラムを見ると、
オリニバン(子どもの部屋)柏田小学校母国語学級など5つ子どもたちの出し物です。そうです、フェスティバルは楽しみながら、子どもたちが誇りや自信を育んでいく大切な場であったのです。そしてもう一度、このことを取組みの原点にしなければと思うのです。オリニバンの子どもたちの歌った『アッパ・オンマがんばって』や、朝鮮初級学校の子どもたちの『鈴の舞』などなど舞台の上から、ちっちゃな精一杯のメッセージがみんなに届けられているのです。これからも子どもたちの、いっぱいのメッセージを受け止めるフェスティバルにしていきたいものです。
 
《韓国でもめずらしくなった伝統結婚式》
 その他に舞台では、もう一つ初めての取組みが行われました。それは「韓国伝統結婚式」の開催です。今では韓国でも民俗村などでしか行われないという本物の韓国伝統結婚式を、参加した多くの市民の前で披露するのです。主人公は在日韓国人良心囚であった孫裕炯さんのお孫さんにあたる金良順さんと、夫となる金正惟氏の二人です。
 舞台の上には屏風やお膳が置かれ、お酒や松と竹、ナムルなどが供えられています。そこにチャンゴやケンナリで厄を払い、場を清める楽隊が登場し場内を回ります。回り終えれば、主礼が進行役となって式が始まります。民族衣装に身を包んだ新郎新婦は、まず水で手を清め、新郎は木で作ったキロギ(渡り鳥のつがいの雁)を新婦の家族に渡します。雁はおしどり夫婦と言われるように生涯相手を変えないとされ、もし相手が死んでも残りの一羽は死ぬまで新しい相手を迎え入れないことから、婚礼の祝いの品として用いられています。その後、お神酒をいただくなど一連の儀式が続き、最後に主礼の「式のすべてが終わりました」という言葉で結婚式は終わるのです。
 この企画は、
パンソリで知られる安聖民さんが中心になって進められたのですが、文化の奥深さについて改めて知ることができました。これからも、もっともっといろいろな文化や歴史を掘り起こしていくことがフェスティバルを豊かなものにすることにつながると思います。

《初めての出店者・出演者の交流会がにぎやかに開催》
 これまで出店の協力者舞台の出演者同士の交流は、あまり行われてきませんでした。出店や舞台の演技こそが、多くの市民にいろいろな国や民族の食べ物・文化を伝える大切な役割を果たしてきたことは明らかです。そこで今回は、初めてフェスティバル開催後の11月17日に出店者・出演者による歓談の場を持つことにしました。
 実はその場を盛り上げるためにステージの演技や出店の風景、インタビューの模様を収録した
映像『ひとの輪、ひとの和/ドキュメント2012年11月3日』を用意していました。編集を終え、当日、初めて見る映像です。いや〜、びっくりしました。素晴らしい。第10回のフェスティバルが放映されたケーブルテレビの映像より何倍も楽しく、みんなが生き生きとしていて、出店者のドアップの横顔とインタビューアーの突込みが秀逸です。このような良い作品ができたのも、撮影の宮本さん、李相玄さんインタビューアーの林さんビデオ編集の田中さんのおかげです。本当に感謝いたします。ぜひとも関係者の皆さん、一度ご覧になってください。
 もちろん交流会は、当初の予定を大幅に上回る30名近くになり大成功の取組みとなりました。

《ドキュメンタリー『ロス暴動の真実―コリアタウンはなぜ襲われたか―』上映会の開催》
 最後は少し重いテーマになりますが、1991年3月に米国ロサンゼルスで発生したいわゆるロス暴動から20周年を迎え、そのありのままの姿を映し出したドキュメンタリー映画『ロス暴動の真実』上映会を、フェスティバルの一連の取組みとして実施しました。これはノンフィクション作家・高賛侑さんが現地に取材に行き、地元の韓国人が製作したドキュメンタリー映画『クラッシュ・オブ・カラーズ』と遭遇し、その上映運動を日本で開始したことがきっかけとなっています。11月24日、布施の市民プラザにおいて上映したのですが、その中で「黒人がコリアタウンを襲撃した」「韓黒葛藤」といった当時の報道が、まったくのすり替えであったことが、関係者の多くの証言により明らかにされています。
 暴動のきっかけは、スピード違反の黒人青年に白人警官が暴力をふるったことから始まります。そのため白人警官は裁判にかけられたのですが、裁判の結果、下された判決が無罪であったことから、黒人の怒りが爆発し暴動に発展したのです。暴動の真実というのは、
ロス市警が白人のみを守るためコリアタウンを放置し、ハリウッドがある白人地域のみの防御態勢を固めたことが、そもそもの原因です。警察もいないコリアタウンにおいて、二組の黒人ギャング団が店舗を破壊し、そこで貧しいラティーノ(ラテン系民族)が略奪を行ったのです。コリアンは銃を持って防衛し始めたのですが、威嚇射撃のみで人には向けられていませんでした。しかしマスコミは黒人の人種差別に対する白人への怒りを、韓国人に対するものとしてすり替えて報道したのです。差別されている者同士を対立させるという、権力者やマスコミの姿が真実の姿として浮かびあがりました。
 私は、このようなことが日本社会でも起こらないとは言い切れないと思います。
もっと外国人も含む市民同士がお互いを理解しあい、助け合うような社会にしていかなければなりませんし、そのための東大阪国際交流フェスティバルは大切な位置を占めているように思うのです。もっと、隣人と知り合いアジアのひとびと、世界のひとびととつながっていこうではありませんか。次のフェスティバルも、もっともっと良いものにしていきましょう。