第2期(2007年)
東大阪市外国籍住民施策懇話会意見書

 2005年から2年の任期で委嘱され、2007年3月まで全7回東大阪市外国籍住民施策懇話会を開催した。
 懇話会では、第1期の意見書の進捗状況について調査し、今期の主要な議題としては、日本社会における主として在日韓国・朝鮮人の本名使用について、多くの時間を費やした。各委員からの提起を受け、情報伝達方法や拠点となる(仮称)国際交流センターの設置についても議論し、以下のとおりまとめるに至った。本意見書の内容を尊重し、施策の展開を図っていただくよう要望する。


1.市職員は本名使用を原則とすること

 東大阪市は、「外国籍住民施策基本指針」の中で、「差別のない真に人権が尊重され、安心して快適に暮らすことができる制度を構築していく」と謳っている。懇話会は、外国籍住民は本名で生活することが人権の根幹であり、そういう環境を整えることは行政の責務だと考える。東大阪市職員およそ4,000人のうち、外国籍職員は30名に満たない。人口比率4%近い約2万人の外国籍住民が暮らす東大阪市において、同率であてはめた180人の外国籍職員が在籍し本名を名乗って勤務していて当然なのである。
 そのためにも、第1期の意見書に「外国籍職員が本名で働ける職場環境づくりに取り組む」という内容を盛り込んだ。第2期でも引き続き、施策の進捗状況も含め、懇話会では本名使用をテーマに深く具体的に論議した。
 通称名を認めている日本社会では、本名使用の選択を実質的に本人にゆだねられている。しかしその背景には、日本の植民地政策の中で創氏改名によって、本名をうばい、それがなお、今日的に継続されて、通称名使用を余儀なくしてきたという歴史的経緯がある。特に、在日韓国・朝鮮人は、生活の中で差別や制限があり、通称名を名乗らざるをえない状況にある。これは本来、日本社会の責任であり、本名を名乗っても不利益を被らない環境を作り出さなければならない。
 日本社会における本名使用がなかなか進まない中で、行政が率先して取り組むことにより、この問題の解決に繋がると考える。そのためにも、市職員採用時には本名使用を原則とすることが必要である。
 東大阪市には一歩踏み込んで状況を乗り越える努力と、国や社会に対して本名使用を勧め、通称名を廃止するよう働きかけてもらいたい。

 ・職員採用の際には、本名での受験及び採用後の本名使用を原則とすること


2.外国人への情報伝達をすすめる

 現状として、国際情報プラザでは市政情報の中から保育所の入所案内や公営住宅の入居申込など期限のあるものを優先して英語、韓国・朝鮮語、中国語に翻訳し、インターネットや紙媒体を通じて情報発信している。しかし、必要としている人に情報が届きにくく、情報を得られる人と、そうでない人とで格差が生じてしまう。
 日本語を母語としない人に対しては、情報の多言語化だけでなく、ふりがなやローマ字、熟語を使わないやさしい日本語も効果的である。外国人の諸団体等を通じて、期限のある短期的情報を積極的に発信し、市職員受験資格に国籍条項がないなどの長期的な情報も改めて流してもらいたい。

 ・多岐にわたる生活に必要な情報の多言語化を一層すすめ、発信すること
 ・行政、NPO、ボランティア団体等によるネットワークを構築すること
 ・外国籍住民の情報収受の拠点づくりをすすめること


3.(仮称)国際交流センターを設立すること


 「外国籍住民施策基本指針」でも、「(仮称)国際交流センターの設立」が項目としてあがっているが、まだ実現にいたっていない。(仮称)国際交流センターは、人々が集い、相談や生活情報、特に行政の情報伝達を推進する場としてのセンター機能を備えることにより、今ある様々な問題解決のための大きな一歩となるのである。(仮称)国際交流センターの理念、事業計画、運営方法など基本的な事項について検討し研究する機関を設置し、設立に向けて取り組むよう求める。

 ・(仮称)国際交流センターを設立すること
 ・関係機関で構成する(仮称)国際交流センター設立準備委員会を発足させること



  李真理(イチンリ)(公募委員 大韓民国籍)
  呉龍浩(オヨンホ)(在日本大韓民国民団中央本部監察委員)
  OSTHEIDER TEJA(オストハイダ テーヤ)(公募委員 ドイツ連邦共和国籍)
  片岡正信(カタオカ マサノブ)(東大阪市自治協議会常任理事)
  金大守(キムデス)(公募委員 「朝鮮」籍)
  合田悟(ゴウダ サトル)(元東大阪市外国籍住民施策有識者会議副座長)
  ジャルガル オチゲレル(公募委員 モンゴル国籍)
  陳琳(チンリン)(公募委員 中華人民共和国籍) 
  中村満寿央(ナカムラ マスオ)(特定非営利活動法人 多文化共生センター副理事長)
  西尾 禎章(ニシオ ヨシアキ)(NPO法人 東大阪国際共生ネットワーク理事)
  平岩修(ヒライワ オサム)(東大阪市在日外国人教育研究協議会会長) 
  村井好野(ムライ ヨシノ)(特定非営利活動法人 東大阪日本語教室副代表理事)
   注)公募委員は、年齢18歳以上の市内在住者である。