第3期(2010年)
東大阪市外国籍住民施策懇話会意見書

 第3期東大阪市外国籍住民施策懇話会は、2008年4月より2010年3月まで全8回開催し、任期中に故合田委員から久保委員へ座長の交代があった。
 懇話会では、第1期及び第2期の意見書の進捗状況について調査するとともに、各委員より自身の体験や活動を通じて感じた意見やアイデアが出された。その内容は、こどもの教育の問題やことばの問題、情報伝達や市政等への参加など生活者の生の声で、いずれにも、未だ残っている差別や制約を取り除き、東大阪をよりよくしたいという思いがこめられている。
 策定から5年以上が経過した東大阪市外国籍住民施策基本指針の内容については全て、その理念を尊重し、施策の実施がなされるべきであるが、特に次に掲げる項目については、速やかに着手していただきたい。


1.こどもの教育の問題

 懇話会では、第1期の意見書に盛り込んだ「新渡日の外国人児童、生徒への日本語指導の充実」や「民族的アイデンティティを形成するため、母語教育等への支援」の現状について調査するとともに、外国籍のこどもにどのような教育を行うのか、また、外国籍住民が自分の母国の言葉や文化をこどもに伝えていく、教えていくということに、市がどのように協力していくのかということを論議した。外国籍や外国にルーツを持つこどもたちが、自分のアイデンティティを確認できるような教育、日本社会で互いの文化的違いを認めながら対等な関係を築く教育を受けることはもちろん、国際理解教育等を通じて共に学ぶこどもの多文化理解を深めることがますます重要となってきている。

・外国籍住民が日本語を読み、書き、話せるようになるための学びの場を拡充すること
・母国の言葉や文化を大切にしてふれあう機会を充実させること
・国際理解教育や国際交流の機会を充実させること


2.市政等への参加


 地域住民と新たにそこに住む外国籍住民との間のコミュニケーションを促進するだけではなく、地域社会をともに支える一員として、外国籍住民が積極的に地域活動や市政に参加できる体制を整備する必要がある。しかし、外国籍住民の参政権をめぐる動きの中で、市政等への参加に向けて解決しなければいけない問題や障害が残っている。
 市の審議会等に積極的に外国籍住民の参加を促していくとともに、市職員への雇用を促進することが重要である。現在、東大阪市職員約3,600人の中で、外国籍職員は20数名、そのうち本名を使用している職員は半数に満たない。本名を使うことによって差別を受けることがあるために、通称名を名乗らざるをえない社会全体を改善するために、まずは行政が率先して本名使用に取り組むことが重要である。外国籍住民の人口比率約3.5%に当てはめると、現在の6倍近い外国籍職員が本名を名乗って勤務していても、決して不思議ではない。

・自治会などと協力して、外国籍住民が地域の方々と交流を深められるような社会参加をしやすい仕組みづくりを行なうこと
・外国籍住民も住民投票に参加できるようにすること
・市にある様々な審議会で、外国籍住民が参加し、発言できるようにすること
・外国籍住民の市職員雇用を促進し、本名で働ける職場環境づくりをすすめること


3.関係機関等との連携


 東大阪市の外国籍住民施策を進めるためには、関係機関との連携が必要不可欠である。例えば労働者については商工会議所などの経済界、留学生については大学などの教育界と連携して、情報を集約し、現状を把握し、施策を効果的に進めていかなくてはいけない。特に、外国人労働者については、不安定な雇用状態にさらされ、労働差別を受けている現状を踏まえ、高齢者が働きやすい環境づくりなど労働環境の改善に向けて早急に取り組む必要がある。
 また、東大阪市に集まった貴重な人材の技術や経験を活かし、文化交流等を通じて市民への多文化共生の意識啓発を進めることも重要である。

・(仮称)国際交流セ・外国人労働者の雇用実態の把握に努めること
・外国人労働者が安定した雇用となるように、人権啓発のための企業研修を推進すること
・JICA(国際協力機構)と連携し、青年海外協力隊OBの経験を活かすこと
・大学等と連携し、先生や留学生の協力を得て、多文化共生のまちづくりを進めること
ンターを設立すること


4.外国籍住民への情報伝達

 現在、国際情報プラザでは、英語、韓国・朝鮮語、中国語による相談案内や情報提供を行っているが、ベトナム語など近年需要が増している言語やマイノリティー言語への対応は十分ではない。日本語を母語としない人へ生活に必要な情報が届かずに、不利益を被ることがあってはならない。情報を多言語化するとともに、情報を得られる人と、そうでない人との間で格差が生じないように、情報をどのようにして伝えるのか工夫することが重要である。

・「東大阪市外国籍住民施策基本指針」を外国籍住民に、それぞれの言語で、広く周知徹底をはかること
・国際情報プラザ事業が、外国籍住民にはもとより、一般市民にも見えるよう「市政だより」等の広報活動を通じて周知徹底をはかると共に、各リージョンセンター等での外国籍住民相談活動を積極的におこなうこと
・英語、韓国・朝鮮語、中国語に加え、ベトナム語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語等、国際情報プラザの対応言語をふやすこと
・本市外国籍住民施策の実施状況を内外に明らかにし、施策実施への理解を求めるため、仮称『東大阪市国際交流白書』を作成すること
・こどもの国籍取得の問題等外国籍住民にとって重要な判決が出たときは、インターネットなどを通じて母国語で理解できるような情報を提供すること
・初めて来日された外国籍住民向けに生活全般の相談ができる場を設置すること


5.(仮称)国際交流センターを設立すること

 これまでに掲げたそれぞれの課題を解決するためには、(仮称)国際交流センターの設立が必要不可欠である。第2期の意見書や東大阪市外国籍住民施策基本指針の中でも「(仮称)国際交流センターの設立」については取り上げられているが、未だ具体的な取り組みがなされていない。
 懇話会においても、「外国籍住民同士や、新しい友達づくりのために交流の場が必要であること」や「外国籍のこどもが集まれるような場がほしい」といった意見があったので、早急に取り組むことが重要である。また、外国籍住民等の相談業務を行なっている国際情報プラザに寄せられる相談件数は開設した平成16年以降、毎年増加し続けており(平成17年度671件、平成18年度757件、平成19年度774件、平成20年度852件)今後も相談や情報収受の需要が見込まれる。

・(仮称)国際交流センター設立の必要性を認識し、実現に向けて(仮称)国際交流センター設立準備委員会を発足すること